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【コンサル事例】

チームコンサルティング事例

クライアント企業とタナベコンサルティンググループのコンサルチームが取り組んだ経営改善の事例。施策と成果を紹介します。
コンサル事例2022.03.18

芝園開発:社員の意識と行動を変える人事制度&ブランディング

 

ポイント


1 「バリューに合う行動」を評価する人事制度
2 社員が考え、創り上げるブランディング
3 目指す方向性が明確になり、社員の行動や意識が変化

 

 

お話を伺った人


芝園開発 代表取締役 宮本 薫氏

 

 

 

 

 

創業者からの承継で、次代にふさわしい姿へ

 

—— 芝園開発様は、国内初の「機械式の無人個別管理・駐輪システム」を誕生させ、首都圏エリアの放置自転車対策による「きれいな街づくり」で公共サービスでも貢献を果たしてきました。そんな中、創立35周年を迎えた2021年6月、事業承継し新社長に就任されました。

 

宮本:当社は前社長である父(海老沼孝二氏、現会長)が創業した会社です。東京都心を中心に、コインパーキング駐車場事業、時間貸し駐輪場事業、フィットネスジム事業などを展開しており、特に近年は自治体向けの放置自転車対策や公共駐輪場の管理などの官公需事業に力を入れています。

 

事業承継は決まっていましたが、社員に認められるには10年はかかる、というのが父の考えでした。同時に、社是「創造とバランス」以外はすべて変えていい、私の想いを打ち出して次世代にふさわしい姿に刷新してほしい、と言われていました。

 

2007年の入社後、父が築いた駐車場・駐輪場運営の事業基盤を守りつつ、社内制度や人材育成などの整備を進めてきました。

 

 

経営理念を刷新し、「目指す方向性」を明確化

 

—— 2019年、経営理念を一新し、想いをカタチにされました。

 

宮本:私自身は、これからの30年を見据え、人事制度を策定したかったんです。ところが、策定にあたり、会社として何を評価するのか明確にする必要があり、そのためには自社が何をしたいのか、自社はどうあるべきか、何を社会に価値提供するのか、などについて明確にする必要がありました。

 

これまでは「駐車場・駐輪場の芝園開発」というイメージが強かったのですが、私自身が取り組みたいことや、社会に提供していく価値はそれだけではないという現状否定からスタートしています。まずは、自社の存在価値は何か、何のために芝園開発が存在しているのかを根本から考え直しました。その結果、社是である「創造とバランス」の重要性をかなり深く再認識できたことも大きな気づきとなりました。

 

 

2021年に創立35周年を迎えた芝園開発。近年は放置自転車対策の官公需事業に力を入れている

 

 

—— 社是はそのままPhilosophyとして継承した上で、新たにミッション・ビジョン・バリュー(MVV)も定めました。

 

宮本:経営幹部とタナベ経営で「戦略キャンプ」を開催し、事業領域の変化、自社の存在価値や使命を見つめ直しました。また、社員とも面談を重ねて、全社的に「自問自答」した感じです。

 

「社員一人ひとりが働くことに意味を見出して、仕事も人生も楽しんでほしい」と思っています。だから、「楽しむ」「自律と自立」「自己成長」「やりがい」などを特に重視しました。そして、Missionは「みんながよろこぶステキな社会」、Visionも「良質な社会システムのスタンダード」をつくるという、確かな軸を立てることができました。

 

 

「MVVを体現する行動」を評価する人事制度

 

—— 人事評価制度策定の際、こだわったポイントについてお聞かせください。

 

宮本:目標ノルマの達成だけを目指すような、能力・成果主義の画一的な人事評価制度の枠組みに、社員をはめ込みたくなかったんです。納得できないときにはタナベ経営へ伺い、個別に相談したこともありましたが、おかげで人事・働き方・処遇の方針も、社員の等級区分や行動評価も、納得できる独自の制度になりました。

 

—— 人事評価制度の詳細、策定時に苦労した点についてお聞かせください。

 

宮本:具体的には正社員を全6等級・4役職に区分し、Valueに定めた項目を体現する行動を定義し評価します。

 

制度策定の際に苦心したのは、等級区分のボーダーラインの設定です。新入社員の1等級から部長クラスの6等級まで、Valueの何がどう違うのか。営業・オペレーション・バックオフィスの3職種に分けて体現レベルを整理するのに、半年を費やしました。人事制度設計は通常、1カ月程度で終わるそうですが、ここをしっかり固めないと先に進めませんよ、とタナベ経営にも粘り強くサポートしてもらいました。

 

—— 社員に伝わりやすいよう、行動評価を定義する一言一句にも心を砕きました。

 

宮本:例えば「火中の栗を自ら拾い…」というフレーズなどは、他社には絶対ないでしょうね(笑)。一人ひとりが役割に応じた力を、実践を通して育んで、自律的に成長していく姿を、どんな表現にすれば社員にわかりやすいか。それを集中的に考えた結果、私自身も漠然としていたイメージを具体的な言葉に落とし込むことができました。

 

また、公共性の高い自社のビジネスモデルや社風との相性から、OKRの導入を決めました。OKRは、会社、部門、個人が同じ方向性で明確な優先順位を持ち、それぞれの目標(Objectives)で主要な結果(Key Results)を、しっかりやり切ることを重視する仕組みです。

 

半期に一度、OKR発表会も実施していますが、MVVとその実現につながる評価が明確になって、全社員が「この方向を目指していけば、大丈夫」と思えるんでしょうね。日常の言葉遣いにも、MVVに登場するフレーズが飛び交う機会が増えたと感じています。

 

クレドブックでは社員に伝わりやすい言葉・表現でフィロソフィーやミッション・ビジョン・バリュー等を記載(左)。
OKR導入の際は説明会を開き、浸透・定着しやすいよう社内へ丁寧に説明(右)

 

 

 

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