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【コンサル事例】

チームコンサルティング事例

クライアント企業とタナベコンサルティンググループのコンサルチームが取り組んだ経営改善の事例。施策と成果を紹介します。
コンサル事例2022.03.18

中和石油:新規事業の開発で多角化を推進し、グループシナジーを発揮

 

 

「観光と食」の領域で「できることから始めて育てる」

 

—— 新たな事業領域を切り拓く上で大切にする理念が、「生活に密着した『まちをつくる企業』」です。

 

杉澤:「地域の発展に貢献できる事業」という意味を込めています。ですので、手掛けてきた新規事業は全て必然的な選択になっています。また、最近の事例で言うと2019年、北海道にある老舗の花屋・彩生堂が、後継者不足で事業承継難に陥っていたため、支援策として買収しました。

 

これからの北海道で成長を遂げる産業は「観光と食」です。観光の領域ではホテル事業を立ち上げ、札幌市と函館市、ニセコ町に3つのホテルを開業しました。不動産事業で培ったノウハウを生かして建物をつくり、運営は東急ホテルと提携しています。運営パートナーと連携することで初期投資を抑えることができ、当社も安定的に賃貸収入が得られるので互いにメリットがあります。ビルメンテナンス事業は、消毒作業で地域の発展に貢献しています。これらは、現状のコロナ禍でも順調に収益貢献するような事業になってきています。

 

—— もう1つの食の領域では2020年、北海道ミルク工房をグループに迎え入れ、アイスクリームの製造・販売をスタートしました。

 

杉澤:先行してウェブの楽天市場にアイスクリーム専門のECショップ「北からの贈り物」を立ち上げました。きっかけは、経営難だった北海道内の食品メーカーの経営支援に乗り出したことですが、方針の違いもあり自社で事業化する方向へと舵を切り直しました。中和石油や北海道ミルク工房の社名は表に出さず、「北からの贈り物」ブランドの認知度を高めるための施策に注力しました。ECショップ販売の強化や販路拡大は、タナベ経営のマーケティング本部に支援を受けており、2カ月ほどで楽天市場の売り上げを20倍に引き上げていただきました。

 

また、当社にはものづくり機能がなかったので、東雁来に立ち上げた新工場の製造設備や生産性向上もタナベ経営の食品専門のコンサルタントにサポートいただき、販売・生産計画の立案にも参画してもらっています。幅広く対応いただけるのは、心強いですね。

 

—— ウェブだけでなく、自社ガソリンスタンドの一角にリアル店舗を4店舗出店しています。これまでにないマッチングですね。

 

杉澤:アイスクリームをどこで売るか考えた時、新たな場所を探すよりも、まずはいまある場所からと考えました。それが自社のガソリンスタンドでした。また、「東急ステイ函館朝市 灯の湯」にもアイスクリーム販売店舗をオープンして好評を得たことで、同ホテルチェーンからさらなる出店依頼を受け、関東への出店を進めています。さらに、ANAグループのグルメギフトカタログにも採用されるなど、商機を拡大しています。できることから始めて大きく育てる、良い取り組みになっています。

 

 

「金雪カップアイス」(左)、「タルトアイス(右)」。ほかにも、こだわりの北海道の食材を使ったアイスクリームが製造・販売されている

 

 

 

事業の分社化で「任せる経営」「シナジー」の実現を目指す

 

—— 事業の多角化は持続的な経営方針です。その姿を実現し、支えていく人材の育成にも力を入れています。

 

杉澤:以前、タナベ経営から「全社を見渡してマネジメントできる人材が育っていない」と、指摘を受けました。確かにその通りだったため、今では「幹部候補生スクール」「経営戦略セミナー」といったタナベ経営の研修・セミナーに年間20人以上が参加するなど、全社一丸となってマネジメント力を育てています。将来的には、分社化した事業の経営を担う存在になってもらいたいと考えています。

 

グループの新たな人事・給与制度もタナベ経営に相談しました。事業・職種別に給与水準が異なりますし、それぞれの良さを失わずやるべきことも明確になる、メリハリのある新制度へと進化させているところです。

 

—— ガソリンスタンドやホテルでアイスクリームの販売が実現したように、今後は各事業がシナジーを発揮するグループ経営もビジョンに描いています。

 

杉澤: 2020度からグループ経営会議を開始しました。日本に5つ、ベトナムに3つのグループ会社が一堂に会して業績や資金繰り、事業計画やビジョンを共有しています。権限移譲を進め、本当の意味で「任せる経営」にしていくことも狙いです。

 

その先には、ホールディングスの設立を見据えています。すでにグループの本社機能や経営管理などの間接部門をベトナムに移管するなど、できることから始めています。人件費は半分以下になり、海外で暮らせば収入も増え生活レベルも向上します。リモートワークも定着し始めていますし、日本でしかできないこと以外は全て海外移管していきたいですね。

 

—— シェアードサービス化だけで終わらない海外移管は、先例の少ないロールモデルとなっていきます。

 

杉澤:「だからこそやるべき」という思いをタナベ経営と共有しています。人材派遣事業もホテル事業も、コロナ禍で厳しい戦いを強いられています。それでも、ガソリンスタンド経営のエネルギー事業1本から着実に多角化が進んでいることが確かな成果だと感じています。これから、グループ全体の収益は着実に改善していますよ。

 

—— 新事業の種が芽吹き、花を咲かせて実が成るまで。北海道だからできることや、既存の枠組みに捉われないことへの挑戦は、これからも続きます。本日はありがとうございました。

 

 

 

PROFILE

    • 会社名:中和石油グループ(中和石油株式会社)
    • URL:https://www.chuwa.ne.jp/
    • 所在地:北海道札幌市中央区南4条西9-1008
    • 設立:1954年
    • 従業員数:315名(グループ計、2021年9月現在)

※ 掲載している内容は2021年8月当時のものです。

 

 

 

 

 

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