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【コンサル事例】

チームコンサルティング事例

クライアント企業とタナベコンサルティンググループのコンサルチームが取り組んだ経営改善の事例。施策と成果を紹介します。
コンサル事例2022.03.18

JESCOホールディングス:「現場を担う人づくり」を体系化したJESCOアカデミー

 

ポイント


1 「3年で1人前の現場管理者」を育成
2 現場力、人間力を養い、資格取得をサポート
3 Web講座中心で現場仕事の多い業界にマッチ

 

 

お話を伺った人


JESCOホールディングス 代表取締役会長兼CEO 柗本 俊洋氏

JESCOホールディングス 代表取締役社長 執行役員社長 古手川 太一氏

JESCOホールディングス 執行役員 戦略経営企画室 人材開発部部長 藤本 淳子氏

 

 

 

 

 

 

次世代の経営人材育成、施工ネットワーク強化が課題

 

—— 「JESCOアカデミー」を設立されたきっかけを教えてください。

 

柗本: JESCOグループは1970年の創立以来、「安心して暮らせる豊かな社会づくり」を基本理念に掲げ、原子力発電所の格納容器のリークテスト業務を核に電気設備、電気通信設備のコンサルティング、設計・積算、施工・管理、保守・メンテナンスなどのワンストップソリューションを提供しています。海外にもいち早く進出し、ASEAN全域へ事業を拡大しました。

 

今後の発展を見据えたとき、2つの経営課題が見えていました。1つは、次代の経営を担う執行役員クラスの人材育成。もう1つは、建設パートナーである協力業者や、施工現場の担い手である技能労働者とのネットワークの強化です。

 

特に後者は、国内の建設投資市場が縮小し、高齢化により建設業従事者が減少する中、自社存続のカギを握ります。対策としてM&Aを推進していますが、それに加え、職人を育て、“JESCOファン”を増やし、施工ネットワークを強化していくことが重要です。

 

そのためにも、まずは自社の新卒社員を体系的に育成し、培った人材育成ノウハウを協力会社の職人養成にも展開しましょう、とタナベ経営から提案があり、JESCOアカデミーが始まりました。

 

古手川: これまでも「プロフェッショナル人材」の育成に力を入れ、さまざまな研修制度を実施してきましたが、制度を十分に生かし切れていないと感じていました。具体的には、当社の業務が現場仕事中心であるため、教える側も学ぶ側もまとまった時間が取れず、集合研修が実施しにくいというジレンマがありました。

 

その意味で、体系的な人材育成を支援するタナベ経営のプラットフォーム「アカデミー」(企業内大学)をベースに、研修をデジタル化することは大きな魅力でした。

 

—— デジタル型研修のメリットをお聞かせください。

 

藤本: いつでも、どこでも、事前学習や復習で繰り返し学べます。新人研修はface to faceの集合研修やOJT、それ以外はクラウドの動画コンテンツで学ぶ。アカデミー導入で「リアルとデジタルのいいとこ取り」ができ、ムダやムリなく効率的に、教育の質のムラもなく、社員が公平に学べる体制を整えることができました。

 

 

ベトナムを拠点に、アジア全域のインフラ需要を支えている(写真はJESCOホールディングスが第2旅客ターミナル新築工事を手掛けたベトナム・ノイバイ国際空港)

 

 

「3年で一人前」の現場管理者を育てる

 

—— アカデミーで育成する人材像を「求められる役割・責務を全うし、結果を出すプロフェッショナル」と位置づけています。

 

古手川: JESCOグループの経営理念「FOR SAFETY FOR SOCIETY」や行動指針に基づいて、階層・年次別のあるべき姿や、そこへ到達する成長イメージを描き出しました。タナベ経営の提案を受けて、最初に定めたのが「3年で一人前の現場管理者を育成する」という人材ビジョンです。

 

一人前とは「独力で小規模工事案件の全体を計画・管理し、成果を上げる」レベルです。当社らしいプロフェッショナル人材を、どれだけの時間をかけて、どんな姿に育てるのか。時間軸と成長像をわかりやすく見える化できたのは大きな収穫です。

 

—— 資格取得講座の開講など、公的資格の取得支援も重視しています。

 

柗本: 設備工事の現場管理に国家資格は欠かせません。JESCOアカデミーでは3年目までに第二種電気工事士取得や2級施工管理技士の1種目取得を必須とし、その後も1級施工管理技士(1種目取得)や他の高度専門資格の取得を義務付けています。

 

エンジニアとしてのキャリアアップと、現場で必要な資格を明確に紐づけるのが狙いです。いつでも現場視点に立って学び、実践につなげ、仕事の成果や経験価値も評価できる、一元化した育成モデルを確立できました。

 

 

現場力、人間力を身に付ける

 

—— 一人前になるためのStart up(入社~半年)、Stage1(半年~1年)、Stage2(2年~3年)。そして一人前に育った後のStage3(4年~8年)とStage4(9年~)。カリキュラムは5つのStageに区分し、「現場力」「人間力」の2学部(7学科)で、全204講座の構成です。

 

藤本: 現場力については「工程・品質・安全・原価」の4つの管理能力と、電気・通信など事業別専門スキルという、5つの切り口で専門性の基準を定めています。

 

人間力については、社会人としての基本スキルに加え、“JESCO人”としての基本スキルを養成します。特に、元請けや協力会社と連携して円滑に工事を進めるためにはコミュニケーション力を高めることが重要ですし、こうした人間力が工程遅れやトラブル、事故の防止につながります。

 

“JESCO人”としての基本スキルとは、自己啓発や問題発見、安全衛生、コミュニケーション実務を指します。
アカデミー設立推進プロジェクト(PJ)には、執行役員や部門長がメンバーとして参画しました。現場を熟知する彼らがカリキュラムを作成するので、どれも実際の現場工事に即した内容です。

 

高い専門性、豊かな人間性を磨き、業務において必須となる資格取得をサポートするJESCOアカデミーはまさに、現場で活躍するために必須のカリキュラムとなっています。

 

 

「3年で1人前」の現場管理者育成を見据えるJESCOホールディングス。いつでも、どこでも学べるWeb講座中心の学習スタイルは、現場業務中心の同社にマッチ

 

 

 

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