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【コンサル事例】

チームコンサルティング事例

クライアント企業とタナベコンサルティンググループのコンサルチームが取り組んだ経営改善の事例。施策と成果を紹介します。
コンサル事例2022.03.17

大陽塗装工業:職人を正社員で雇用し、技術の向上・伝承を図る

 

ポイント


1 職人を正社員として雇用
2 技術の向上・伝承、職人同士の連携がスムーズ
3 「DAIYOアカデミー」で若手社員の成長をサポート

 

 

お話を伺った人


大陽塗装工業 代表取締役 辻 昌人氏

大陽塗装工業 専務取締役 辻 雄太氏

 

 

創業100年を超える老舗
信用を重ね、事業を広げる

 

—— 大陽塗装工業は、岡山県を拠点に公共工事から大型物件、橋梁、戸建て住宅まで幅広い領域の建築塗装を手掛けておられます。また、創業100年を超える老舗企業でもあります。

 

辻(昌):当社の創業は1910(明治43)年。創業者の小野政太郎が、薬種や塗料小売りを行う小野真正堂を開業したのが始まりです。その後、1921年から塗装請負に進出。1970年に現在の大陽塗装工業へと社名を変更しています。1973年に伯父・辻修二が代表取締役に就き、私で3代目となります。

 

—— 社長就任後、公共工事の受注で業績が伸び、会社は急成長を遂げています。

 

辻(昌):もともと建築塗装に強みがあり、下請け塗装の受注を重ねながら信用を高めてきたことが現在につながっています。会社の規模拡大に伴って公共工事の入札に参加できるようになり、公共事業を手掛けたことで大陽塗装工業の認知度が上がりました。

 

今では、公共工事の元請け企業から、1次下請けとして塗装工事を任せてもらう機会が増えています。その積み重ねによって、現在の売上高は社長に就任した2017年と比べて倍増しています。

 

—— 近年、鳥取県など近隣県での工事も増えるなど、中四国エリアでの存在感が高まっています。

 

辻(昌):割合は年度によっても上下しますが、おおむね8~9割は県内の工事、残る1~2割が県外の工事となっています。メーンとなるのは中国エリアですが、特に公共工事については中国に加え、四国管内も注力していきたいと考えています。

 

また、大阪をはじめ関西、中部あたりの建築工事においても、1次下請けとして当社に声が掛けていただけるようになりました。これは今後の展開を考える上で良い兆候だと感じています。

 

大陽塗装工業 代表取締役 辻 昌人氏
岡山市生まれ。1987年岡山理科大学付属高等学校を卒業し、大陽塗装工業入社。
塗装工から始め職長、主に鋼橋工事の現場代理人を経て、2009年専務取締役に就任。
先代の会長の死去に伴い、2017年代表取締役に就任。
また、2014年に職業訓練指導員となり、検定補佐員として後輩の指導、育成に当たっている。

 

 

 

成長の要は職人
雇用し育てる環境を整備

 

—— 建築塗装を軸に、事業領域やエリアをうまく広げておられます。事業展開を進める上での指針はありますか。

 

辻(昌):当社の事業の要は、現場で働く職人。会社の信用は職人の質で決まると言っても過言ではありません。職人の質が向上すると品質が向上し、取引先からの信用が高まって会社が成長していく。ですから、職人の本質を伸ばすようサポートすることが私の一番大事な役割です。会社を好スパイラルに導くために、当社は職人を正社員として雇用し、教育にも力を入れています。

 

—— 塗装業界では、一人親方(事業主)のような形が一般的です。仕事があるときだけ下請けとして職人に来てもらう方が、固定費を下げられて会社に利益が残ります。

 

辻(昌):おっしゃる通りです。塗装業界で社会保険制度を用意して職人を常時雇用するところは多くありません。特に、当社のように20名を超える職人を抱えている企業は皆無です。

 

しかし、安心して働ける環境を用意しなければ、技術者の確保は難しいというのが私の考え。多くの技術者を確保できているから複数の公共工事を同時に受注することが可能になりますし、社員として雇用することで技術の向上や維持につながります。なぜなら、正社員として雇用することでベテランが若手に技術を伝承したり、職人同士でノウハウを共有したりするなど交流が生まれ、全体の技術力が向上するからです。

 

会社として技術の伝承や人格形成に力を入れていくために、現在はタナベ経営にご協力いただきながら教育プログラムをつくっているところです。

 

—— 正社員として雇用することで職人の量と質を維持できます。それが事業拡大を支える土台となるのですね。

 

辻(雄):技術面でのメリットだけでなく、チームワークの良さも当社の大きな強みと考えています。工事のたびに外注の職人を寄せ集めるよりも、社員同士の方がスムーズに意思疎通を図れるため、協調性を持って1つの仕事に向き合えているように感じます。そこは他社にない当社の特長です。

 

—— お訪ねするたびに社員の仲の良さを感じています。日帰りのバスツアーなどのイベントを積極的に行っていることも、家族のような雰囲気をつくり出す要因でしょう。

 

辻(雄):イベントは協調性を高めるのに役立ちます。また、しっかりとした教育制度を整えることで、若手社員の定着率向上にもつながると思います。

 

—— 人材育成においては、教育目標として「地域社会と共生して役立つ人格形成を目指し、従業員ひとり一人の幸福感を実現する。」を掲げておられますが、どのような思いが込められているのでしょうか。

 

辻(雄):少し背伸びしすぎたようにも思いますが、社員の皆さんに仕事を覚えていただき、頑張ってもらいたいという願いを込めています。当社には、それをサポートする教育制度だけでなく資格取得を評価する制度もありますから、頑張った分がきちんと給与に反映されます。金銭的なインセンティブに加えて、努力が評価され、仕事の幅が広がることでやりがいを感じてほしいと考えています。

 

 

大陽塗装工業 専務取締役 辻 雄太氏
岡山市生まれ。親の転勤に伴い名古屋、東京、兵庫で育つ。
2003年、明誠学院高等学校(岡山市)卒業後、大陽塗装工業入社。
塗装工から始め職長、主に建築工事の現場代理人を経て、2017年専務取締役に就任。

 

 

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