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【コンサル事例】

チームコンサルティング事例

クライアント企業とタナベコンサルティンググループのコンサルチームが取り組んだ経営改善の事例。施策と成果を紹介します。
コンサル事例2022.03.17

関ケ原製作所:人間主体の経営を追求、セキガハラウェイで未来へ

 

 

ポイント


1 事業利益追求だけでなく、人づくりの探求を重視
2 理念とビジネスを両輪とする「ひろば経営」を実践
3 「社長塾」で次世代リーダーを育成

 

 

お話を伺った人


関ケ原製作所 経営企画室 経営企画部 部長 安田 知興氏

関ケ原ゼネラル・サービス 環境グループ miraiチーム 主任 山口 知加氏

 

 

「工業製品の宮大工」に今も息づく創業の精神

 

天下分け目の関ケ原―。群雄割拠の戦乱の世に、幕を下ろした合戦から420年。歴史にその名を刻む古戦場跡に本社・工場を構えるのが、関ケ原製作所だ。

 

1946年の創業時から手掛ける鉄道関連製品は、列車軌道の分岐器がJR東海のシェア6割を占める。また、鉱山機械向け油圧機器、商船機器、舶用特機、精密機器や大型製品、軸受用製品など、7つの事業領域で超高精度のオーダーメードを展開するニッチトップメーカーだ。自らを「工業製品の宮大工」と呼ぶのは、高付加価値の一品モノをつくり出す矜持の表れ。その姿にはいつも創業の精神が息づいている。

 

「創業者・矢橋五郎は『人を中心に、その可能性を大切にする』会社を志しました。徹底的に従業員の立場に軸足を置く、人間主体の経営です」。経営企画室経営企画部部長の安田知興氏はそう語る。

 

1970年代のオイルショック時、取引先の倒産で経営危機を迎え、苦渋の決断で人員を合理化した。「人を犠牲にする経営は二度と繰り返さない」と誓い、志を継いだ2代目社長・矢橋昭三郎氏は、1980年代の円高不況の危機の際、全従業員との懇話会を開催した。

 

互いに学び高め合いながら、全員が主役となって一人一人の人生が充実する光景を「人間ひろば」と定義。事業利益の追求だけでなく、人づくりの探求を重視する企業像を目指していった。基本理念「限りなく人間ひろばを求めて」を定めたのは、ES(従業員満足度)の概念が世間に広まるずっと前のことだ。

 

グループ売上高199億円、社員数390名(2019年5月期)へ成長を遂げた今も、その理念はしっかりと受け継がれている。2018年、現社長の矢橋英明氏が就任時に掲げた旗印は「ひろば経営」だ。従業員の満足なくして顧客が満足するものづくりはできないと考え、「ひろば経営はミニマム51%、事業経営はマックス49%」と宣言。人間主体の経営は、進化形へと一歩を踏み出した。

 

 

関ケ原製作所 経営企画室 経営企画部 部長 安田 知興氏(左)
関ケ原ゼネラル・サービス 環境グループ miraiチーム 主任 山口 知加氏(右)

 

 

「ひろば経営」をつなぐ次世代を育てる「社長塾」

 

「ひろば経営」は、理念とビジネスの両輪で実践する経営で、100年企業として永続的に発展する道づくりでもある。オーナー経営にこだわらず誰もが社長になれる、理念や志をつなぐ経営の実現に向けて2019年にタナベ経営とともに開講したのが、次世代リーダー研修「社長塾」だ。

 

「経営陣が講師となって、将来の社長を担う人材を育てる。矢橋が自らそう宣言して、30~40歳代の18名を選抜しました。人間力と技術力を兼ね備えたリーダー人材を育成するために、従来は別々に実施していた研修を一体化。理念に込められた思いと、日々の仕事をつなげるのが狙いです」と安田氏。月1回、計8回の受講を終えた第1期生は、さらに新たな羅針盤となる「セキガハラウェイ」を描き出した。

 

従業員のために、社会のために、バランスよく事業を展開すること。それを実現する従業員全員にとって、働きやすくやりがいのある空間で、その質を高めていくこと。理念を飾り文句にせず自分事として受け止め、自らの思いも込めることで、日々の実践に生かす道標を、より分かりやすく導き出した。

 

「自分が何をしたいのか、会社をどんな姿や存在にしたいのか。その答えが経営基本方針に書いてあった!そう笑顔で語る人もいて、みんなイキイキと変わりました」。そう語る安田氏にも、満面の笑みがあふれる。

 

上意下達の一方的な押し付けではなく、次代の担い手が納得するまで自ら考えて見いだした未来志向の「セキガハラウェイ」。同世代の従業員の共感も得て浸透し、着実に広がりを見せている。

※2代目社長・矢橋昭三郎氏の後、大平薫夫氏、佐久間康二氏、小寺正芝氏と非同族経営が続いていた。矢橋英明氏は6代目

 

 

地域や観光客とつながり未来を見つめるカフェ

 

甲子園球場のグラウンド約10個分に及ぶ広大な本社工場敷地(13万m2)には、三つの村活動ゾーンがある。「生きることは学ぶこと 学ぶことは変わること」を実践する学び舎活動、「オンリーワン・ナンバーワンの技術技能の研鑽と継承」を担う技術村活動、「人と企業、地域が集い、ふれあう憩いの場」となる文化村活動だ。その一つ、文化村に2018年6月、新たなシンボル「cafe mirai」が誕生した。

 

「人づくりとものづくりが根差し、豊かな歴史と自然にも恵まれた『人間ひろば』を、社会にも広く開放して企業価値を高めたい。また、社員が誇りに思える空間にしたい。そう考え抜いた末に、カフェが生まれました」とプロジェクトリーダーを務めた山口知加氏は語る。

 

コンセプトは「歴史あるまちで、今をすごし、未来に想いを馳せる」。培ってきた企業価値と誇りを未来志向で継承していくモデルとして、こだわったのは「調和」だ。木目が美しい杉材など地元の特産品を使い、関ケ原町の魅力の発信拠点となり、歴史散策の休憩スポットとして観光振興にも貢献。社員同士や地域の人々、観光客が「集まって、つながる空間」になっている。

 

学び舎の「社長塾」、文化村の「cafe mirai」に続き、技術村にも2021年春、創造ラボ空間「匠道場」が完成する。人も技術も企業文化も育む関ケ原製作所の挑戦は、これからも続いていく。

 

 

PROFILE

    • 会社名:株式会社関ケ原製作所
    • URL:https://www.sekigahara.co.jp/
    • 所在地:岐阜県不破郡関ケ原町2067
    • 創業:1946年
    • 従業員数:390名(グループ計、2019年5月末現在)

※ 掲載している内容は2020年6月当時のものです。

 

 

 

 

 

 

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