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【コンサル事例】

チームコンサルティング事例

クライアント企業とタナベコンサルティンググループのコンサルチームが取り組んだ経営改善の事例。施策と成果を紹介します。
コンサル事例2019.06.28

藤村機器:CS&ES最優先思想で東北ナンバーワンの商社へ

 

東北全域を視野に入れ管工機材を迅速確実に供給

藤村機器は青森県弘前市に本社を置き、水道・ガス・電気を安定供給する管工機材をはじめ、空調システムや住宅設備機器などを扱う専門商社である。同社は1957年の設立以来、事業エリアの拡大に努め、青森支店と八戸支店、秋田県に大館支店と秋田営業所、宮城県に仙台支店を展開。子会社の新日東鋼管の拠点(岩手県に8カ所)を加えて、ほぼ東北地方全域で事業を手掛けている。

さらに、同業他社をしのぐ圧倒的な品ぞろえも同社の強み。400社近い仕入れ先から多種多様な商品が供給される体制を確立し、本社倉庫と資材センターは厳密な管理体制の下で6000点超の在庫を擁している。そして、外部業者に委託せず、自社の専任配送員によって迅速で確実な納品を行うことも、顧客の信頼を築く要因になっている。

「当社のお客さまはほとんどが設備工事会社で、現在1000社超の会社とお付き合いがあります。お客さまから寄せられるあらゆるニーズに的確かつ迅速に対応できる提案力が、お客さまとの深い信頼関係を築く原動力です」と代表取締役社長の藤村充氏は言う。

同社の社員が提案力に磨きをかける背景には「顧客の立場にたって仕事を行う」という経営理念の条項がある。

「お客さまの立場に立って物事を考えないと、お客さまの役には立てない。その思いが社員に共有されている証しと言えます」(藤村氏)

誠実な人間を育成し社員の生活向上に努める

商社である藤村機器にとって、人材育成こそが同社の将来を左右する最重要事項だと藤村氏は述べる。そして「2代目社長を務めた私の祖母は『社員が自分の子どもを入社させたいと思うような会社にしたい』と言っていました。その思いを私の父である前社長(藤村徹会長)も私も大切にしています」と続ける。確かに人材育成は、経営理念に掲げる「社員の生活向上に努力を払う」という条項に直結する。

藤村氏は「誠実な人間をつくること」を人材育成の基本としている。誠実とは、常に顧客の立場に立って物事を考えることだ。

人材育成で苦労した点について、「イエスマンが多く、言われたことはきちんとやるが、それ以上のことは考えられない社員が多かった。特に40歳代以上の管理者が顕著でした」と同氏は言う。以前、管理者をタナベ経営の幹部候補生スクールに参加させていたが、景気の悪化に伴って中断したところ、数字の管理はもちろん、部下の育成面でもレベルダウンしたと振り返る。

そこでタナベ経営に相談し、ジュニアボードを活用した経営幹部の育成に取り組んだ。そこでの成果を確認した藤村氏は、新たに支店長候補や次世代管理者へ向けた講習を実施。さらに、先輩社員を講師にした若手社員の社内講習も行うようになった。

「当社は商社なので、他社との価格差は微々たるもの。お客さまが求めるものを的確に提案することで、他社より多少高額でも購入してくれるようなお客さまを確保できる営業担当者が不可欠ですし、そのような人材を育成できる仕組みを考えなくてはいけません。昨年、社内でES(従業員満足度)アンケートを実施したところ、若手社員を中心に『もっと知識やスキルを覚えたい』と講習を望む声が上がりました。私がやりたいことと社員の要望が同じベクトルを向いていることが確認できたので、より意欲的に社員育成に取り組んでいこうと思います」

さらに、子会社の新日東鋼管の経営理念を藤村機器の経営理念と統一。続いて賃金水準や評価制度を含めた人事体系を、藤村機器に近づける取り組みを進めることで両社の交流を深め、互いの社風や人材像を融合させ、事業拡大を促進させるシナジー効果の発動を狙っている。

同社が大切にしている「経営理念」。本社に入ってすぐの位置に掲げられ、いつでも確認することができる

同社が大切にしている「経営理念」。本社に入ってすぐの位置に掲げられ、いつでも確認することができる

 

藤村機器 代表取締役社長 藤村 充氏

藤村機器 代表取締役社長 藤村 充氏

施工サービス領域を拡充し業界ナンバーワンへ

現在、藤村機器の年商は約140億円で、東北地方では業界ナンバー2の規模である。今後、まずは年商200億円を達成して業界ナンバーワンとなり、そのスケールメリットでリーズナブルな商品を提供するとともに、両社の得意分野を補完し合い、より高いソリューションを顧客に提供することを目指している。

業績を伸長する事業として期待されるのが、顧客の最大の悩みである“人手不足”を解消する施工サービスの提供。自社施工部門の充実を図るほか、施工会社や同業他社を対象にしたM&Aも検討している。

「後継者不在で会社を手放したい同業者は数多い。M&Aで施工のノウハウやアイデアを充実させるチャンスと言えます。それによって川下への事業展開を図りたいですね」(藤村氏)

施工サービスは、物販よりも利益率が跳ね上がる。弘前市周辺では藤村機器しかできない工事手法を使った案件が増えており、「現在の経常利益率は約3%と商社としては高い方だが、サービス領域を拡大させて5%くらいにまで伸ばしたい」と藤村氏は抱負を述べる。

このような目標を完遂するためには、若手社員の活躍が不可欠だ。藤村氏は若手社員へ「人生の目的は、幸せになること。一人一人がたくましく成長し、仕事を通して自分だけでなく家族や周囲の人たちを幸せにする喜びを感じてもらいたい」と熱いエールを送る。

PROFILE

    • 藤村機器㈱
    • 所在地:青森県弘前市高田3-6-2
    • 設立:1957年
    • 代表者:代表取締役社長 藤村 充
    • 売上高:144億2200万円(連結、2018年6月期)
    • 従業員数:171名(連結、2019年5月現在、パート含む)

?タナベ経営より??

藤村機器は400社近い仕入れ先と6000点を超える在庫を擁し、子会社の新日東鋼管と共に東北全域で管工機材、住設機器を展開する専門商社である。

藤村社長が先代から受け継いだ「社員が、自分の子どもを入社させたいと思うような会社にしたい」との思いは、時代を超えて社員、顧客、地域から必要とされ続けることであり、その実現する姿勢には社員に対する愛情も感じられる。

「人材育成こそが将来に向けた最優先事項である」と話す藤村社長の言葉には、社員と共に東北ナンバーワンを目指す強い決意が感じられる。同社の今後が楽しみである。

経営コンサルティング本部支社長藤井 健太

経営コンサルティング本部
支社長
藤井 健太

経営コンサルティング本部副支社長日下部 聡

経営コンサルティング本部
副支社長
日下部 聡

 

 

 

 

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