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選ばれる会社へ、「決断」を。
【コラム】

トップメッセージ

タナベコンサルティンググループ、タナベ経営の社長・若松が、現在の経営環境を踏まえ、企業の経営戦略に関する提言や今後の展望を発信します。
コラム2022.01.05

2022年年頭指針:若松 孝彦

 

 

コロナショックによる「世界同時リセット」から生まれた「分断経済」。本格的な経済復興へと進む2022年は、経営資源の強みを深化・探索・連結しながら「唯一無二」の貢献価値へと昇華させるときだ。「経営理念以外は全て変える」ほどの情熱を胸に、“志”の再定義と「中長期ビジョン2030」の策定を通じ、社会や顧客にとって“かけがえのない会社”となる「One&Only戦略」を推進しよう。

 

 

貢献への「情熱」が「唯一無二」を生む

 

コロナショックの被害は2008年のリーマン・ショックを大幅に上回り、IMF(国際通貨基金)は「2020年から2025年まで(6年間)のコロナショックによる経済損失は約3000兆円」と試算しています(2020年10月現在)。世界の新型コロナウイルス感染者は約2億6000万人、死亡者は約518万人(2021年11月26日現在、米ジョンズ・ホプキンス大学)に拡大しました。

 

私は2020年12月から2021年1月にかけて、世界の5大国(米国・中国・インド・英国・ドイツ)のビジネスパートナーと、Zoomを使って延べ30時間に及ぶディスカッションを実施。外出禁止、病床ひっ迫、ワクチン接種率、テレワーク、イベント中止などの社会課題が世界共通であることを確認し、価値観と経済の「世界同時リセット」を実感しました。ニューヨークのビジネスパートナーにDX(デジタルトランスフォーメーション)の状況を質問すると、「Digitize or Die(デジタル化か、死か)」と総括したことが今でも忘れられません。

 

これまでのコロナ禍経済を一言で表現すると「分断経済」、別の言い方をすれば「鎖国経済」になります。国境や県境などをまたがないといった行動制限により、人と人の対面コミュニケーションができない社会が出現しました。米国ではバイデン政権が発足し、米中貿易摩擦が加速。それが世界のサプライチェーンを分断して部品供給や生産活動が止まり、原油・原材料高に直結しています。ある産業カウンセラーは「人間は孤独でも生きてはいけるが、孤立したら生きてはいけない」と言っていましたが、分断経済はまさに「孤立状態」です。

 

分断された経済は、いわば先が見えづらい「不確実性の高い経済」。先の見えない暗闇にいるからこそ、未来を照らす「ビジョン」という明かりが必要です。そして、この新しいビジョンの基本方針は、「One&Only(唯一無二)の価値」をデザインするところから始まります。One&Onlyの価値とは、他社が模倣できない「未来の社会に貢献できる価値」です。“何のために存在するのか”という「存在価値」から、“社会に貢献する価値とは何か”という「貢献価値」への昇華が必要です。社会に存在するだけではなく、情熱を燃やして貢献するからこそ企業は存在できるのです。

 

そのためには、単年度方針ではなく中長期ビジョンが必要です。2030年をターゲットに、3年で3回転、もしくは5年で2回転する「フューチャー(未来)ビジョン」を策定してください。

 

コロナ禍からの復興が正念場を迎える2022年、タナベ経営は、“未来の社会に不可欠な唯一無二の貢献価値”を創造する「One&Only戦略」を提言します。

 

 

 

「サステナビリティー」「DX」「M&A」
3つのビジョン実装が重要

 

2021年の世界経済を一言で表現するなら、「不確実性の高い回復」です。IMFが発表した「世界経済見通し 2021年10月」によると、2021年の世界経済成長率は5.9%(予測)。これは1980年以降における最高水準の伸び率で、世界経済は回復基調にあります。

 

しかし、世界経済の回復は二極化しています。人との接触が制限されたことを受けてEC(電子商取引)市場が拡大する一方、UNCTAD(国連貿易開発会議)がUNWTO(国連世界観光機関)と共同で2021年7月に発表したリポートによると、観光業の経済損失は2020年から2021年にかけて世界で約4兆ドル(約440兆円)に上ります。さらに、OICA(国際自動車工業連合会)の統計(2021年10月)によると、自動車産業でも工場の稼働停止や販売店の休業が相次ぎ、2020年の世界の自動車販売台数は前年比13.8%減の7797万台、生産台数も同15.8%減の7762万台となりました。

 

このような状況において、回復から成長へ向けたキーファクターとして挙げられるのは、①サステナビリティー、②DX、③M&Aです。

 

①を代表するのが、2015年12月に採択されたパリ協定を契機とした「カーボンニュートラル(二酸化炭素の排出量と吸収量を均衡させること)」です。米国も日本も、「2050年をめどに脱炭素化を目指す」と表明するなど、カーボンニュートラルに賛同した国は123カ国・1地域に達します。

 

②は、動画配信サービスを手掛けるNetflix(ネットフリックス)が成功事例です。同社は、店舗型のDVDレンタルサービスから「定額制の動画配信サービス」へ事業転換。AI技術を駆使して顧客が検索しなくても見たい作品が案内される「レコメンデーションエンジン」を開発し、コロナ禍の巣ごもり需要もあって今や世界全体の会員数は2億人を超えます。“デジタルファースト”の取り組みがビジネスモデル格差につながった事例です。

 

③に関しては、金融情報サービス会社リフィニティブの集計によると、2021年上半期(1~6月)の世界のM&A実行額は2兆ドルを超え、前年同期比で2.3倍に達しています。今後は、M&Aという経営技術を駆使して世界とつながる戦略が必要です。

 

主要各国・地域の経済動向を見ていきます。米国経済は活動再開により回復基調で、IMFによると2022年の経済成長率は5.2%(予測)。注目すべきは、DX先進国である米国では、ディーラー店舗で試乗せずにオンラインで手配した「宅配試乗車」という仕組みを利用する人が増加していることです。店舗でのセールスからオンライン販売へ切り替える「セールステック」が、自動車業界に限らず、あらゆる業界・領域で拡大するとみられます。

 

中国はコロナショックからの回復が進むものの、2022年の経済成長率は5.6%に鈍化すると予測されています。EC大手のアリババグループやタクシー配車アプリ「DiDi(ディディ)」を提供する滴滴出行、食品デリバリー大手の美団などに巨額の罰金を科すケースが相次ぎ、内向きの経済政策が経済成長の鈍化に拍車をかけると懸念されます。

 

欧州経済は、ポストコロナを見据えた回復が前進し、2022年の経済成長率はEU4.3%、英国5.0%と予測されています。欧州における経済活動の中核は「グリーン戦略」。2020年のEV(電気自動車)販売台数は100万台超となり、欧州車市場の約10%を占めるに至りました。今後はエンジン車の排除方針を打ち出しており、EVの登録台数は2025年までに700万~800万台に達する見通しです。

 

このような世界経済の状況から、2030年へのフューチャービジョンには「サステナビリティー」「DX」「M&A」の実装が求められているのです。

 

 

 

 

 

M&A戦略を駆使したポートフォリオ経営

 

続いて日本経済を検証します。IMFの予測では、2022年の日本の経済成長率は3.2%と先進国の中で最低です。日銀短観の業況判断指数(DI、2021年9月、大企業・業種別)を見ると、輸出増加や巣ごもり需要などの追い風を受けた業種と、インバウンドや移動制限、時短営業、半導体不足などの被害を被った業種との二極化が鮮明に表れています。

 

このような状況でも、2020年の全国企業倒産は前年比7.2%減の7773件(東京商工リサーチ調べ)となりましたが、日本国内の企業数は減少を続け、2040年には296万社まで減少すると予測されます(中小企業庁「2020年版 中小企業白書」)。事業承継についても深刻で、2020年の企業の後継者不在率は65.1%に達します(帝国データバンク調べ)。さらに、中小企業庁「中小企業白書(2021年版)」によると、日本の開業率は2019年度で4.2%、廃業率は3.4%。どちらも先進国では最低水準です。その結果、日本企業は事業ポートフォリオの組み替えが進まず、多角化マネジメントがうまくいかないケースが多発しています。

 

経済回復に向けて、政府は2021年6月に「経済財政運営と改革の基本方針2021」(骨太方針2021)を発表。成長を生み出す4つの原動力として、①グリーン社会の実現、②官民挙げたデジタル化の加速、③日本全体を元気にする活力ある地方創り、④少子化の克服、子どもを産み育てやすい社会の実現を示しました。

 

中でも、①は骨太方針の“一丁目一番地”に当たり、カーボンニュートラルを実現する2050年に向けて成長が期待される14の重点分野を明示しました。また、②はIMD(国際経営開発研究所)が発表した「世界競争力ランキング2021」(2021年6月)において31位の「デジタル後進国」となった日本の状況打破を狙います。

 

日本は、IT人材不足、知的財産権数、ビジネスへの俊敏性などのビジネスモデルDXの取り組みにおいて後れを取っています。特にIT人材不足は深刻で、経済産業省は「2030年には45万~79万人のIT人材が不足する」と警鐘を鳴らしています。各社ともIT人材の採用と育成は急務です。

 

コロナ禍においても成長を続ける企業があります。作業服販売のワークマン(群馬県伊勢崎市)、事務用品販売のアスクル(東京都江東区)、アウトドアスポーツメーカーのシマノ(大阪府堺市)、IT企業のオービック(東京都中央区)、オフィス家具製造販売のオカムラ(神奈川県横浜市)などです。

 

これらの企業の特徴は、「消費者の行動変化」「EC需要」「外部環境変化」「業務効率化需要」「オフィス需要」に対応し、M&A戦略を駆使した高収益のグループ連結経営であることです。日本企業のM&Aは、目的によって「事業ポートフォリオのリデザイン型」「事業承継型」「ベンチャー企業買収による成長戦略型」「クロスボーダー型」に分類できます。

 

 

※洋上風力産業、燃料アンモニア産業、水素産業、原子力産業、自動車・蓄電池産業、半導体・情報通信産業、船舶産業、物流・人流・土木インフラ産業、食料・農林水産業、航空機産業、カーボンリサイクル産業、住宅・建築物・次世代型太陽光産業、資源循環関連産業、ライフスタイル関連産業

 

 

 

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Profile
若松 孝彦Takahiko Wakamatsu
タナベコンサルティンググループのトップとしてその使命を追求しながら、経営コンサルタントとして指導してきた会社は、業種・地域を問わず、大企業から中堅・中小企業まで約1000社に及ぶ。独自の経営理論で全国のファーストコールカンパニーはもちろん金融機関からも多くの支持を得ている。1989年タナベ経営入社、2009年より専務取締役コンサルティング統轄本部長、副社長を経て現職。関西学院大学大学院(経営学修士)修了。『100年経営』『戦略をつくる力』『甦る経営』(共にダイヤモンド社)ほか著書多数。
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