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2016.10.31

世代交代を重ねると企業の成長力は減衰する 社長の代数から見える“成長の八五三”現象

「名家三代続かず」という金言がある。繁栄を謳歌(おうか)する名家でも、何代も続いて栄えることは少なく、3代目が家運を傾かせる例が多いという意味だ。鎌倉時代に3代で絶えた源氏将軍(源頼朝・頼家・実朝)が典型例である。

 

企業も3代続けることが難しい。中小企業庁の『中小企業白書(2016年版)』によると、成長段階にある企業は創業者が経営を担っている場合が多く、承継代数を重ねるに従って成長企業が減り、成熟企業や衰退企業が増えていく傾向にあるという。

 

実際、タナベ経営の戦略財務研究会が行ったアンケート調査結果も、同様の傾向を示している(【図表】)。社長の世代別に業績トレンドを見ると、「創業世代」企業では増収増益が8割以上を占めたが、「第2世代」企業は増収増益が5割台にとどまり、「第4世代」企業では3割台まで低下していた。世代交代を繰り返すたび、七五三ならぬ「八五三」の割合で成長力が鈍化し、成熟化する傾向が顕著である。

 

【図表】業績トレンド(社長の世代別)

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それは事業戦略にも表れている。今後の投資方針を世代別に見ると、創業世代は「自社の経営資源投資」が大半を占めていたが、第2、第3世代になると、経営資源を補う「アライアンス」(業務提携・共同事業)を志向する企業が2割程度現れる。そして第4世代では、新規参入や事業存続を目的とした「M&A(合併・買収)投資」を志向する社長が約3割に達していた。

 

経営者の代数を事業のライフサイクルに重ねると、創業世代は成長期、第2世代は成熟期、第3世代から第4世代にかけて衰退期に入る。つまり世代交代を経て事業が伸び悩む中、成熟期の第2世代は既存の経営資源の補完によって、また衰退期に差し掛かる第3、第4世代は他社のビジネスモデルや経営資源を組み込むことにより、新たな価値を創出し、再成長を図ろうとしていることが分かる。

 

現在、日本企業の経営者で最も多い世代は第2世代だとされる。第2世代から第3世代への移行期にある今が正念場である。ここで何も手を打たなければ、激しい企業間競争に巻き込まれて修羅場を迎え、やがて衰退期という土壇場へ追い込まれることになる。

 

「三代続けば末代続く」との金言もある。3代かけて堅実に基礎作りを心掛ければ、長く栄えるという意味だ。自社を3代で“御破算”にさせないためにも、事業承継という新陳代謝を適切なタイミングで行うとともに、従来の価値観を時代の変化に合わせて変更し、次代の収益の柱を見直していくことが求められる。

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