Vol.13 テレワーク運用に必要なこと(後編)
相互交流できる場を
最後に、三つ目のモチベーションの維持についてです。メールやチャットで事務的なやりとりはできても、リアルタイムに相手の気持ちをおもんぱかることは困難です。問題の共有はできても、ちょっとした気持ちのやりとりが難しくなります。
実はここが、不調を誘引する大きなポイントになります。実際の職場でも、雑談が少ない部署にメンタル不調が起こる傾向があります。ちょっと嫌なことがあっても、その気持ちを吐き出す場があれば、実際にはどうにもならないことであっても、気持ちが収まることはよくあります。「こんなことがあった」と話すだけで、気持ちの整理につながったりもします。
また、雑談は業務に直接関係した話題だけではなく、日常のちょっとした話もやりとりするので、気分転換になったり、心の距離を縮めたりする効果があります。「調子はどう?」といったやりとりだけだったとしても、会話する機会を持つことでメンタルヘルスは保たれるのです。1人暮らしで、会話を交わす相手がいない方にとっては、特に重要です。
1日に1回でも良いので、時間を決めて管理者の方から部下と直接話す機会を設けましょう。世の中にはさまざまなオンラインツールがありますので、状況によって使い分け、一対一でなくとも少人数で顔を合わせるなど、相互交流の場を設けましょう。一方的な指示出しで与えてしまう不満を緩和し、相手の意向を確認することもできますし、何よりも「従業員を孤独にさせずに業務を進める」という管理者の重要な役割を果たせます。
人と直接話す機会が減り、「孤独な気持ち」を抱え始めると、自分の存在意義を見いだせなくなるといった悪循環に陥りかねないので、早めの対処が大切です。毎日関わることで部下の変化にも気付きやすくなりますし、今日あったとりとめのない話をするだけでも、心の荷下ろしになり、各自のセルフケアに大いに役立ちます。
テレワークを活用できるか否かは、組織の柔軟性を示す客観的な指標にもなると思います。メリットを生かしつつ、より良い活用方法を模索していかれることを願っています。
筆者プロフィール
大野 萌子 (おおの もえこ)
一般社団法人日本メンタルアップ支援機構(メンタルアップマネージャ資格認定機関)代表理事、産業カウンセラー、2級キャリアコンサルティング技能士。内閣府、防衛省などの官公庁をはじめ、大手企業、大学、医療機関などで年間150件以上の講演・研修を行う。著書に『言いにくいことを伝える技術 ~もう振り回されない! ストレスフリーな人間関係を一瞬で手に入れる』(ぱる出版)、『「かまってちゃん」社員の上手なかまい方』(ディスカヴァー携書)など。