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マーケット・スタッツ

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2017.08.31

特集1:現場力

2017年9月号

 

 

工場内の収集データ具体的活用が進まず

 

 

 

 

政府はこのほど、2017年版「ものづくり白書」を取りまとめた。それによると、経済産業省が2016年12月に実施したアンケート調査結果で、全回答企業(4566社)の約3分の2に当たる66.6%が、生産プロセスにおいて何らかのデータを収集していることが分かった。同省が2015年12月に実施した調査結果と比べ、収集企業の割合は26ポイントも上昇しており、自社工場内でデータを取得する動きが大幅に進んでいる。

 

データ収集を行っている企業を業種別に見ると、「化学工業」(76.2%)、「非鉄金属」(75.2%)などでデータ収集の比率が高い一方、「一般機械」(55.2%)や「電気機械」(64.5%)では相対的に低かった。組み立て型産業(一般機械、電気機械)よりもプロセス型産業(化学工業、非鉄金属)においてデータ収集が進んでいる理由として、白書は「プロセス型産業の方が、中央制御室など一括監視による人の介在の余地が少ないシステムを作り上げている」と分析している。

 

ただ、収集データの活用度合いについて調べたところ、機械や人員の稼働状態に関する「見える化」や、製造物・部材のトレーサビリティー(生産履歴追跡)管理などに活用している企業は1割前後にとどまった。2015年の調査結果と比べても比率はほとんど変化がなく、データ収集企業が大幅に増えた割には具体的活用が進んでいない。(【図表1】)

 

また、工場内データ収集の有無と営業利益の関係を見ると、営業利益が前年対比で増加傾向にある企業ほど、データ収集に取り組んでいる傾向が強いという。(【図表2】)

 

データ収集・活用を主導する部門については「製造部門」(44.8%)が最も多い。「情報システム部門」(7.9%)を加えると、過半数(52.7%)の企業で現場サイド主導によるデータ収集・活用が行われていることになる。一方、「経営者・経営戦略部門」(29.6%)は3割に満たなかった。(【図表3】)

 

経済のデジタル化が進む中、製造現場のデータ収集・活用による付加価値向上の重要性が高まっている。にもかかわらず、多くの企業でデータ収集・活用が経営戦略的視点から行われていない傾向がある。データ収集・活用が生産現場の合理化など生産性向上での活用にとどまり、ビジネスモデル変革など新たな付加価値創出につながらない恐れがある。白書は、「ビジネスモデル変革など付加価値創出に必要となるデータの利活用は、経営者や経営戦略部門主導で行うことが有効」と指摘している。

 

 

 

 

 

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