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マーケット・スタッツ

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2017.07.31

特集1:アグリビジネス

2017年8月号

 

 

若者・農ガール・インバウンド
新たなトレンドの取り込みが農村活性化の鍵

 

 

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高齢化や担い手不足、荒廃農地の拡大、収益性や生産性の問題、厳しい就労環境など、日本の農業が抱える課題は多い。だが、農業の未来を照らす新たな動きも起こり始めている。鍵を握るのは、“若者”“農ガール”“インバウンド”だ。

 

近年、農業に関心を寄せる若者が増えていることは心強い。農林水産省がまとめた「平成28年度食料・農業・農村白書の概要」によると、20代、30代の農村への移住相談者は増加しており(【図表】)、若い世代ほど農業体験、農家レストランでの食事などに関心が高い。

 

こうした中、自治体やNPOも農村の活性に力を入れる。例えば兵庫県篠山市は、地元住民によるNPO法人などで、農家の生活を体験できる「農泊」の受け入れ体制を整えた。すると、2015年10月からの1年間で700人弱が来訪。Uターン移住や荒廃農地再生などの波及効果も生まれているという。

 

また、山形県飯豊町中津川地区は「中津川むらづくり協議会」を立ち上げ、農家民宿や移住・定住へ向けた取り組みを実施。年間1000人超が宿泊し、都市と農村の交流が活発化しているそうである。

 

さらに、最近は“農ガール”と呼ばれる女性の就農者が増加中だ。この動きに着目し、農林水産省は「農業女子プロジェクト」を推進。農業で活躍する女性を取り上げ、情報発信を通じて若手女性就農者の増加を狙う。

 

農業分野で問われる「経営マインド」「収益性」についても、女性の関与が欠かせない。というのも女性が経営に関与する場合、収益力が向上する傾向にあるからだ。同書によると、女性が経営に関与した場合、売上高の増加率は2ポイント、経常利益の増加率に至っては72ポイントも高くなるという。

 

インバウンドの増加も、大きなチャンスになる。訪日外国人旅行者数は2016年、過去最高の約2404万人を記録。日本の「食」や「文化」への期待も大きく、海外客の呼び込みは農村活性の起爆剤となり得る。農を取り巻く新たなトレンドを捉え、確実に生かせるかどうかが、農村活性化の鍵を握る。

 

 

 

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