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マーケット・スタッツ

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2016.06.30

特集1:次世代体制づくり

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2016年7月号

 

 

急増するIPO、本当の目的は「優秀人材の確保」?

 

近年、企業のIPO(新規株式公開)件数が急増している。日本取引所グループの公表データによると、2014年の年間新規上場(※)が前年比22件増の75件と大幅に増えた。また翌15年も89件と同14件増加した。2012年(44件)からの3年間で倍増した形だ。(【図表1】)

 

※ 東証1部・2部、マザーズ、JASDAQの合計。TOKYO PRO Market は除く

 

 

【図表1】IPO 数の推移(東証1 部・2 部、マザーズ、JASDAQ)

【図表1】IPO 数の推移(東証1 部・2 部、マザーズ、JASDAQ)

 

これは景気回復に伴う企業業績の改善に加え、資金調達需要が高まっていることも背景にある。ただ、最近のIPOの目的は、それだけではなさそうだ。帝国データバンクの調査結果によると、人手不足感が高まる中、IPOによって優秀人材の確保を目指す企業が増加傾向にあるという。

 

同社がIPOの意向がある310社に目的を尋ねたところ(複数回答)、最も多かったのは「知名度や信用度の向上」(前年比0.8ポイント減の71.6%)、次いで「優秀な人材の確保」(同2.7ポイント増の69%)、「資金調達力の向上」(1.3ポイント増の53.9%)、「従業員の士気向上」(1.1ポイント増の34.8%)だった。

 

このうち上位2項目について、過去5年間の推移を見ると、知名度・信用度向上は2年連続で減少した一方、優秀人材の確保は一貫して上昇を続けている。優秀人材確保の回答率は、2012年調査では3位だったが、2014年は資金調達力を上回り2位に浮上。2015年では14.9ポイント増の66.3%と大幅に上昇し、2016年も2.7ポイント増えた。(【図表2】)

 

また、従業員の士気向上も2016年は前年から1.1ポイント上昇し、IPOを人材活性化のきっかけにしたいと考える傾向も強まっている。IPOによる知名度・信用度の向上を、IPO本来の機能である資金調達でなく、優れた人材の獲得や社内のモチベーションアップの手段にしたい企業が増えていることがうかがえる。

 

上場予定市場については、「東証マザーズ」(構成比54.2%)が突出。次いで「東証JASDAQ スタンダード」(同19.4%)、「東証2部」(5.2%)と続く。地方取引所の新興市場(名証セントレックス、福証Q-Boardなど)よりも東証2部への上場予定が上回り、“東証一極集中”が進んでいる。

 

 

【図表2】「IPO の目的」回答率の推移(上位7 項目、複数回答)

【図表2】「IPO の目的」回答率の推移(上位7 項目、複数回答)

 

 

 

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