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2016.01.29

特集1:課題マーケット

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2016年2月号

 

 

2014年度の特養施設建設費、過去7年で最高水準

 

資材費・人件費の上昇がかさむ

 

このほど独立行政法人福祉医療機構(WAM)がまとめた調査結果によると、2014年度の特別養護老人ホーム(以降、特養)の建設費が過去7年で最高水準に達したことが分かった。

 

それによると、14年度の特養施設建設費の平米単価(全国平均)は25.9万円となり、前年度から2.7万円増加(11.6%増)し、4年連続で上昇した(【図表1】)。このうち東日本大震災の復興需要で平米単価が突出していた東北3県(岩手・宮城・福島)は、前年度から横ばいの28.2万円と落ち着きをみせたものの、首都圏が28.6万円と3.4万円上昇し、東北3県と同水準になった。

 

WAMは平米単価の上昇要因として、消費税率8%引き上げの影響に加え、2020年の東京オリンピック開催を控えた首都圏の施設整備や人材不足による、資材費・人件費の上昇を挙げている。

 

一方、特養の定員1人当たり延べ床面積(全国平均)は、13年度の51.2m²から14年度は45.7m²(10.7%減)と減少した。減少率は7年間で最大だった。定員1人当たりの延べ床面積を小さくすることで、上昇する建設費を抑制しようとしたことがうかがえる。

 

ただ、定員1人当たりの建設単価は、前年度から36.9万円上昇(3.2%増)し、1198.4万円となった。平米単価の上昇を受けて延べ床面積を減らしたものの、単価上昇を吸収できず、定員1人当たりの建設単価も過去7年で最高水準に上昇した。

 

2015年4月の介護報酬改定は、改定率が過去2番目に大きな下げ幅(マイナス2.27%)となったため、収益が悪化した施設が多い。WAMが特養施設に行ったアンケート調査(有効回答数:1012)によると、同年4月以降のサービス活動収益が前年同期比で「減少」と回答した割合が約7割(68.8%)を占めた。基本報酬の減算を補うとして期待された介護職員処遇改善加算については、ほぼ全ての事業所が算定し、うち約9割が最も加算率の高い「Ⅰ」を算定していたが、事業者の65.5%は減収を「補えない」と回答している。

 

各施設はマイナス改定の対策として、水道光熱費や委託費、人件費の削減に取り組んでいるが、コスト抑制に限界があることから、施設の建て替え・改修工事を見送る動きも出ている。アンケート調査では、改定に伴い設備投資計画(建て替え・改修工事など)を見送った施設は約4割(36.9%)に上った。

 

特養の入居待機者は全国で50万人を超えるとされる(厚生労働省調べ)。各自治体では特養の建設推進に取り組んでいるものの、施設建設は厳しい状況にあるといえそうだ。

 

 

【図表1】特別養護老人ホームの建設費平米単価、定員1 人当たり延べ床面積

【図表1】特別養護老人ホームの建設費平米単価、定員1 人当たり延べ床面積

 

 

 

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