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マーケット・スタッツ

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コラム2021.04.09

コロナ禍を追い風にペット関連市場が1.6兆円突破(2020年度)


2021年4月号

 

 

 

 

政府は2月19日、内閣官房に「孤独・孤立対策担当室」を設置し、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う孤独・孤立対策へ本腰を入れ始めた。国民の孤独感が深刻化すると、モチベーションや生産性の低下を招き、大きな社会的損失をもたらす可能性があるからだ。2018年に世界で初めて「孤独担当大臣」を置いた英国の試算では、孤独による同国の経済損失が年間320億ポンド(約4.7兆円)に上るという。孤独が及ぼす健康被害はタバコと同等という研究結果もあり、欧米では孤独を“現代の伝染病”と呼ぶ向きもある。

 

コロナ禍が長期化する中、日本ではテレワークや外出自粛による孤独感から、ペットを飼って癒やしや安らぎを求める人が増えている。市場調査プラットフォーム事業を手掛けるマーケティングアプリケーションズ(東京都千代田区)の調査によると、1回目の緊急事態宣言後(2020年4月7日以降)にペットを購入した人の割合は犬と猫それぞれで約30%程度に上ることが分かった。(【図表1】)

 

 

【図表1】緊急事態宣言後(1回目)にペットを購入した人の割合

出所:マーケティングアプリケーションズ/プレスリリース(2020年12月29日)

 

 

ペットフード協会の統計によると、2020年における全国の犬・猫推計飼育頭数は合計1813.3万頭(前年比2.4%減)となり、犬(同3.5%減の848.9万頭)・猫(同1.4%減の964.4万頭)ともに減少した。しかし、そのうち2020年に新たに飼い始めた頭数合計は94.5万頭(同15.2%増)と2桁増になり、データをさかのぼれる2016年以降で最大の伸び幅を示した。新規飼育頭数の内訳は、犬が46.2万頭(同14.4%増)、猫は48.3万頭(同16.1%増)だった。

 

コロナ禍に伴う新規飼育頭数の増加は、ペット保険の契約件数からもうかがえる。ペット保険上場大手2社(アニコムホールディングス、アイペットホールディングス)の2020年12月末時点の保有契約件数を見ると、両社とも前年同月実績より大幅に契約数を伸ばした。このうちアイペットは2021年1月に60万件を突破し、50万件の突破時(2020年3月)から過去最速の約10カ月で10万件増加するなど好調に推移している。

 

コロナ禍でのペット需要の増加により、消費者のペット支出額も増えている。総務省の「家計調査」によると、2020年の2人以上世帯(1世帯当たり)の年間ペット関連支出は前年比4.2%増の2万5200円と堅調に伸びた(【図表2】)。それに対して全体の支出総額は同5.3%減の333万5114円となり、金額ベースは比較可能な2001年以降で過去最少、減少幅は過去最大だった。

 

 

【図表2】ペット関連年間支出(2人以上世帯)の推移

出所:総務省統計局「家計調査」

 

 

矢野経済研究所の試算によると、ペット関連総市場規模(小売金額ベース)は2020年度で1兆6242億円(前年度比3.4%増)。コロナ禍の影響でペットシーツや猫砂などの消耗品を中心に家庭内在庫確保の需要が拡大したことに加え、新規飼育者の増加需要(首輪や食器、ハウス、ケージなど)やペットと過ごす時間が増えたことによるペットケア関連用品(オーラルケア、ブラシ、タオル、耳掃除、セルフトリミングなど)の需要が拡大した。22年度には1兆6873億円まで拡大する見通しという。(【図表3】)

 

 

【図表3】ペット関連総市場規模の推移と予測

出所:矢野経済研究所/プレスリリース(2021年2月8日)

 

 

中でも、これから大きな伸びが期待されているのが「ペットテック市場」だ。ペットテック(PetTech)とは、ペットとテクノロジー(技術)を組み合わせた造語で、ITを活用してペット飼育者を支援する製品・サービスの総称である。具体的には、留守中の見守りカメラやペットロケーター(ペット検知・探索機器)、猫用スマートトイレ、犬の活動量や感情を分析するデバイスやアプリといったものがある。矢野経済研究所によると、ペットテックの国内市場規模(小売金額ベース)は2020年度で約22億円(18年度の約3倍)、23年度には約50億円へ拡大すると予測されている。

 

 

コロナ禍によるライフスタイルの変化で再び注目されたペット産業は、今後も引き続き堅調に市場が拡大していくと見込まれている。日本は、少子化と若者の“結婚離れ”による婚姻件数の減少や、独居老人の増加などにより単独世帯(世帯主が1人の世帯)が急増しており(【図表4】)、社会構造的な孤独化が進行している。そうした孤独の空白を埋めるため「ペットの家族化」が進展し、新たな製品・サービスの需要が拡大していくとみられる。

 

 

【図表4】日本の人口動態予測

出所:総務省「国勢調査」、厚生労働省「人口動態統計」、国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(2017年推計)」「日本の世帯数の将来推計(全国推計、2018年推計)」、リクルートブライダル総研「婚姻組数予測」、厚生労働省「厚生労働白書(2018年版)」

 

 

※「ペットフード」「他の愛玩動物・同用品」「動物病院代」「他の愛玩動物関連サービス」の合計額

 

 

 

 

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