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コラム2020.12.28

BtoB(企業間取引)の受注方法
8割強が「アナログ」手法


2021年1月号

 

 

コロナ禍の影響で日本の労働生産性が悪化している。日本生産性本部によると、2020年第2四半期(4~6月)の就業1時間当たり実質労働生産性上昇率(季節調整済み)が前期比2.7%減、年率換算で10.2%減と大幅なマイナスになった。(【図表1】)

 

 

【図表1】実質労働生産性上昇率の推移(四半期ベース前期比、季節調整済み)

出所:日本生産性本部「日本の労働生産性の動向 2020」(2020年11月12日)

 

 

経済活動が再開した第3四半期(7~9月)は反動増、いわゆる“デッド・キャット・バウンス(死んだ猫でも高い所から落とせば高く弾む)※1による大幅な伸びが予測されるが、今冬の第3波の感染状況次第では再び大幅減に陥る可能性もある。自社の事業や製品・サービスが顧客視点で「不要不急」(絶対に必要なものでもなければ急を要することでもない)に分類される企業は、需要急減・業績不振を前提に在宅勤務(テレワーク)やDX(デジタルトランスフォーメーション)、EC(オンライン販売)などによる生産性向上策が急がれる。

 

生産性向上のキーワードは「デジタル化」である。だが、アナログな商慣習が根強く残る企業は多い。業務管理システム開発会社のアイルが中堅・中小企業712社(計734人)に「企業間取引(BtoB)で最も多い受注方法」を尋ねたところ、ファクスや電話、対面営業、展示会など「アナログ」が8割超(85.8%)を占めた(【図表2】)。最も多かったのは「ファクス」(37.2%)で、次いで「電話」(16.7%)、「対面営業」(15.6%)などが続く。

 

 

【図表2】企業間取引における最も多い受注方法

出所:アイル「企業間取引における受注業務の実態調査」(2020年11月19日)

 

 

ファクスといえば、2020年のコロナ禍第1波で感染者数の集計方法が批判の的となった。病院の医師が手書きの発生届をファクスで保健所に送り、保健所の職員がパソコンに打ち込み、入力データを報告書に手で書き写すというものだ。デジタルツールをアナログ的に使うという本末転倒ぶりが世間を騒がせた(ただしファクスは欧米で現在も使われており、「日本だけがいまだに使っている」との報道は誤りである)。

 

近年はペーパーレス化が進んでいるとはいえ、日本では他の先進国に比べ紙書類が重視され、デジタルデータを持て余している職場も少なくない。紙書類が重視される背景には、「目で見て分かりやすい」「物理的に長く残る」「システム障害の不安がない」などの理由がある。端末機器の液晶画面で見る文章よりも、紙媒体に出力した文章の方が一般的に閲覧性や視認性が高いとされる。また、「和紙1000年、洋紙100年」といわれるように紙は寿命が長く、長期の保存・保管に適している。

 

そもそもデジタルデータは長期保存技術が確立されておらず、システム障害による消失リスクも免れない。実際、NASA(米航空宇宙局)やグーグル、マイクロソフトなどは現在もデータバックアップ媒体としてアナログツールの磁気テープ(LTO)を採用している。特にグーグルは2011年のGメールデータ消失事故で、LTOからデータ復旧に成功したことが知られている※2。デジタルデータの保存では一般的にハードディスクドライブ(HDD)が使われるが、製品寿命はHDDが約5年であるのに対し、LTOは適切な環境下であれば50年以上といわれる。

 

また、HDDを稼働させるには電気が必要で、扱うデータ量が多いほど電力コストの負担が増す。Dell EMCが2019年4月に公表した調査結果によると、日本企業が管理する1社当たりの平均データ量は8.88PB(ペタバイト)と、2016年(1.29PB)に比べ約6.9倍も増えた。テラバイト(TB)に換算すると9093TB(1PB=1024TB)。1TBは新聞朝刊1000年分の情報量に相当するため、日本企業は新聞909万年分の膨大なデータをすでに所有し、しかも倍々ゲームのように増えている計算になる。近年のクラウドサービスの増加に加え、5G(第5世代移動通信システム)の普及により情報量がさらに増加すれば、コストも幾何級数的に積み上がることは確実だ。

 

デジタルデータの急増を背景に、運用コストが安く経年使用での消失リスクも低いLTOは需要が高まっている。JEITA(電子情報技術産業協会)はLTOの世界市場規模について、2013年の3580億円から2020年は約2.4倍の8688億円へ拡大すると見込んでいる。(【図表3】)

 

 

【図表3】テープストレージ出荷金額予測

※テープストレージ(コンピューター用磁気テープ記録媒体)
出所:電子情報技術産業協会「テープストレージとその需要予測」(2016年3月)

 

 

生産性向上には業務プロセスのデジタル化が不可欠だが、仕事の見える化を進めると逆にアナログ化が避けられないタスクも見えてくる。スマートフォンのデジタル時計で正確な時間を知りつつも、壁掛け式アナログ時計で直感的に時間の経過をつかむ人が多いように、デジタル化が進む中でも注目すべきアナログ化がある。今後はデジタルとアナログの融合による“デジアナ”DX投資活動も活発化することが想定される。

 

 

※1…ウォール街の投資格言で「マーケットが大きく下げた後に起きる反発」のこと
※2…JEITAテープストレージ専門委員会「CPS/IoT時代のデータ利活用を支えるテープストレージソリューション~データ長期保管事例(JIS規格準拠)~」(2019年10月17日)

 

 

 

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