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2018.02.28

特集1:暮らしのIoT

2018年3月号

 

 

所有者不明土地、2040年に約720万haへ増加
経済的損失は累積6兆円

 

 

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登記名義人が転居・死亡したにもかかわらず、台帳更新や相続登記が放置され、所有者の分からない土地(所有者不明土地)が地方圏を中心に増加している。このため、公共・民間事業の用地取得で支障を来すなど社会問題化しているという。

 

国土計画協会の「所有者不明土地問題研究会」(座長・増田寛也元総務相)が2017年12月13日にまとめた最終報告書によると、16年度に地籍調査を実施した1130地区(563市区町村)の約62万筆のうち、20.1%が所有者不明土地であることが判明した(【図表1】)。地帯別に所有者不明率を見ると「林地」(25.6%)が最も高く、次いで「宅地」(17.4%)、「農地」(16.9%)と続き、「DID(人口集中地区)」においても14.5%あった。

 

また、同研究会は全国約10万筆の土地所有権登記について、最後の登記からの経過年数を調べたところ、最後の登記から50年以上経過している土地が大都市で6.6%、中小都市・中山間地域で26.6%あることが分かった。最後の登記から年数が経過するほど、不明率が高くなる傾向が見られたという。

 

登記簿に所有者の住所の記載がない、住所の記載が「満州国」、共有地の所有者数が約700人で追跡が困難――といった問題に直面する自治体は多い。東日本大震災の復興事業(高台移転事業)では、移転先の土地の所有者が不明で用地取得が難航し、計画変更を余儀なくされるケースもあった。日本は高齢化の進展で死亡者数の増加が見込まれ、多死社会・大量相続時代を迎える。空き家の急増(2013年:820万戸→2033年:2150万戸)に加え、相続登記未了による所有者不明土地も増えていくと考えられている。

 

同研究会の試算によると、2020~2040年に発生する土地相続のうち約27~29%が未登記になるとみられている(【図表2】)。何も対策をしなかった場合、2040年には所有者不明土地の面積が全国で約720万ha(ヘクタール)に達するという。これは北海道本島の面積(約780万ヘクタール)にも匹敵する規模である。

 

所有者不明土地による経済的損失は、2016年単年で約1800億円、2017~40年の累積で約6兆円に上るという。所有者を探すコストや事業を予定通り行っていれば得られた利益の損失、農地や森林として機能が発揮されないことによる損失、固定資産税の滞納額などを合算した。算出不可の項目もあり、実際はさらに損失額が膨らむ可能性がある。(【図表3】)

 

 

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