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【コラム】

21世紀のラグジュアリー論 イノベーションの新しい地平

ミラノ在住のビジネスプランナー安西洋之氏による連載。テクノロジーだけではなく、歴史や文学、地理、哲学、倫理が主導する21世紀の「新しいラグジュアリー」について考察しています。
コラム2020.12.28

Vol.15 スイス時計に見るラグジュアリー市場の変化


2021年1月号

 

 

人々の価値観や電子商取引の浸透など、この5年ほどでラグジュアリー市場を取り巻く環境が大きく変わった。今回はいくつかの例とともに、スイス時計について紹介したい。

 

 

ラグジュアリー市場に変化の兆し

 

ラグジュアリー領域にとって購買層の若年化が意味するところは大きい。これまでも、年齢層を問わずファッションのカジュアル化の傾向があったものの、若年層ではさらに加速するとみられる。そのアイテムの代表例がスニーカーである。

 

スニーカーの市場投入が目立ち始めたのは2017年ごろからだ。フランスのバレンシアガが、一見して「ごつい」高額スニーカーを投入して大ヒットさせたのが2018年初めである。

 

一方、普段は使用されていない空間などで一定期間だけ営業するポップアップストアも増加している。かつては、世界各地の都市の中心にある不動産価値の高い通りに同じ内装の店舗を持つことが、ラグジュアリー企業の証しであった。だが、プラダが2018年の前半期だけで36カ所にポップアップストアを開いた。新しい客をつかみ、そのデータを収集していくには新しい場所で試行錯誤をする必要があったのだ。

 

目的はそれだけではない。いわゆるブランド通りの高級店へ足を踏み入れることに優越感を持っていた顧客層が、従来の購入経験をさほどうれしいと思わなくなってきたのである。しかも、その商品はオンラインでも購入可能なため、さらなる希少経験が欲しい顧客を満足させるには、場所・期間限定で経験できる方が理にかなう。皮肉といえば皮肉な展開だ。

 

このように、ラグジュアリー商品の販売現場が変わりつつある。

 

 

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