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【コラム】

21世紀のラグジュアリー論 イノベーションの新しい地平

ミラノ在住のビジネスプランナー安西洋之氏による連載。テクノロジーだけではなく、歴史や文学、地理、哲学、倫理が主導する21世紀の「新しいラグジュアリー」について考察しています。
コラム2020.09.30

Vol.12 ラグジュアリービジネスは文化ビジネス


2020年10月号

 

 

自国文化のラグジュアリービジネスを構想する学生

 

ラグジュアリービジネスのルーツは欧州にあり、当該分野のシェア70%以上を欧州企業が有している。ラグジュアリービジネスを学ぶことは、欧州にあるハイブランド企業のビジネス戦力育成の性格が、必然的に強くなるだろうことは想像に難くない。

 

実際、ボッコーニ大学は、イタリアの高級ブランド企業が集まった財団であるアルタガンマと提携している。アルタガンマの会員企業が、授業や研修で学生がリアルな現場を知る機会を提供し、このコースを修了した優秀な学生を採用するという循環がある。

 

欧州以外の学生、新興国出身の学生にとって、この教育が持つ意義は特に大きい。ハイブランドの基礎になっている欧州文化をゼロから学べるからだ。すなわち、新興国出身者たちは自国で欧州ハイブランドのディストリビューション(商品分配・在庫調整)やマーケティングの要職に就き、欧州を本社とする企業と現地のスムーズな橋渡し役として活躍できる。欧州企業にとって彼・彼女らは重要なアンバサダーにもなるわけだ。

 

しかしながら、長期的にみた場合、このメカニズムがいつまでも安定的に機能するとは思えない。欧州文化をベースにしたハイブランドのビジネスに関与すれば、同様に「われわれの国でも、われわれの文化がアピールできる道を目指したい」と考える人が出てくるのが普通だ。それによって欧州のシェアが下がり、新興国ブランドのシェアが浮上してくるはずだ。

 

私のこの疑問に、ロイヤコノ氏は次のように答える。

 

「『欧州高級ブランド企業との、良き橋渡しとなる人材育成』という目的がある一方、新興国のそれぞれの文化に基づいたラグジュアリービジネスをつくっていきたいとの期待をかなえたいと考えている。そうした希望は特に中国の学生から出てきている」

 

インドの学生にも同様の傾向が見受けられるものの、中国の学生の方がよりはっきりとしているそうだ。背景の一つには中国政府が主導する中国文化の再評価の動向があり、もう一つには中国の経済成長のタイミングがインドに先行したことがあるだろう。

 

まず欧州ブランドで新興国にラグジュアリー市場がつくられ、そのビジネスの手法を学ぶことで、次に自国文化に基づいたラグジュアリーを構想したいという欲求が出てくるのである。

 

ここで一つ注意しなければならないことがある。欧州ハイブランドといえど、全ての側面で先進的なビジネスを行っているわけではないということだ。例えばデジタルプラットフォームの構築の仕方、オフラインとオンラインの組み合わせ方など、デジタル化については中国の実例から学ぶべきことが多いだろう。また何より、ラグジュアリー最終消費財のグローバル購入シェア3割を占める中国人が接するデジタル環境で、売り上げを伸ばしていかないといけない。

 

したがって、欧州側の「上から目線」ではなく、他文化圏との交流を前提としている姿勢があることを注記しておくべきだろう。

 

 

 

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