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【コラム】

21世紀のラグジュアリー論 イノベーションの新しい地平

ミラノ在住のビジネスプランナー安西洋之氏による連載。テクノロジーだけではなく、歴史や文学、地理、哲学、倫理が主導する21世紀の「新しいラグジュアリー」について考察しています。
コラム2020.03.31

Vol.6 企業活動に倫理的視点が求められる時代


2020年4月号

 

 

2019年1月、米セールスフォース・ドットコムは「CEO(最高倫理責任者)」という幹部ポストを新設した。行動ターゲティング広告や顔認証など技術の革新が進む中、テクノロジーの倫理的・人道的利用を推進する必要があるとの認識からだ。今回は企業倫理が強く求められるようになってきた背景について考えたい。

 

 

ラグジュアリーブランド企業と社会的責任

 

本連載の3回目(2020年1月号)で、2019年4月のパリ・ノートルダム寺院の火災後、高級ブランドのグループが即決のような形で修復のための資金を寄付したエピソードに触れた。その真意がどこにあるかはグループトップたちのインタビューだけでは分からない。だが、「社会の良きモデル」であろうとする意図は十分に感じられる。

 

米ベイン・アンド・カンパニーの2019年の報告に以下のデータがある。

 

ラグジュアリーブランドの顧客の約60%は「ラグジュアリーブランドは他の産業よりも社会的な責任を果たすべき」と考え、約80%は「社会的な責任を果たしているブランドを好む」と回答。そして「ラグジュアリー商品の価格には、サステナビリティーのためのプレミアムがすでに含まれていると考えるのが当然である」と思っているのだという。

 

このデータはラグジュアリーブランドが直面する現実をよく示している。ノートルダム寺院修復への寄付を素早く決めたのは、「私たちが動かずに誰が動くのだ?」と、さも当然のことと言わんばかりのアクションだったのである。

 

最近、カナダのある著名なリテール・コンサルタントが「宗教への信仰者や政府への信頼が激減している中、その代わりにブランドの方針を支持することで、人々は心の穴埋めを行っている」と、皮肉ともいえる現象をコラムに書いていた。

 

ノートルダム寺院修復への寄付からは、ラグジュアリーブランドと社会的責任の深い関係を垣間見た。ともすると有名企業の売名行為と一蹴してしまうのは、単純な見方なのかもしれない。

 

 

 

 

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