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【コラム】

21世紀のラグジュアリー論 イノベーションの新しい地平

ミラノ在住のビジネスプランナー安西洋之氏による連載。テクノロジーだけではなく、歴史や文学、地理、哲学、倫理が主導する21世紀の「新しいラグジュアリー」について考察しています。
コラム2019.12.27

Vol.3 ラグジュアリーに求められる高い精神性


2020年1月号

 

 

「並外れた人々の普通な物」であった「ラグジュアリー」を起点として、「普通の人々の並外れた物」として、「ラグジュアリーブランド」という領域が成立している。この構造を象徴するいびつな事件を紹介するとともに、ラグジュアリーに求められる精神性について考察を深めたい。

 

 

ドルチェ&ガッバーナの騒動

 

2018年11月、イタリアのドルチェ&ガッバーナ(以降、D&G)によるトラブルが起こった。

 

中国・上海で開催を予定していた同社のファッションショーの広告動画が中国文化を侮辱するものだと物議を醸し、出演予定だった多くの中国人モデルがボイコット。同社と、同社のデザイナー、ステファノ・ガッバーナ氏のインスタグラムが炎上し、ショー自体が中止となった。詳細は割愛するが、批判が集まった動画は中国人モデルが箸を不適切に使ってピザやパスタの食べ方を教えるという内容だ。同社はすぐさま動画を削除したが、世界中に騒ぎが広まった。

 

ブランドの評価を専門とする英ブランドファイナンス社イタリア支社のマッシモ・ピッツォ氏は、「2018年1月の同社イメージは9億3700万米ドルだったが、2019年1月は8億1500万米ドルとなったので、このスキャンダルによって13%のマイナスだったと私たちは算出している」と語る。

 

同社独自の計算によれば、フェラーリやヴェルサーチェなどラグジュアリーのカテゴリーに入る企業の場合、企業価値に占めるブランドイメージ価値は40%強だとしている。対して、日産自動車やベネトンは十数パーセントだそうだ。

 

その差、二十数パーセントのところで、どう勝負するか。あるいは、この割合をどう上昇させるか。これがラグジュアリーを考える際の鍵になるわけだ。その「謎の部分」が、特に欧州ブランド神話を構成している。

 

欧州に栄光の歴史と文化があることは確かだが、そのおごりをもろに出してしまったのがD&Gだったのである。この事態は、特に評価されやすい欧州以外の市場において、反感を買うような脇の甘いことをしたという次元の話ではない。ラグジュアリーたるもの、精神的な高みが基礎にあるべきとの期待を裏切った行為なのである。

 

 

 

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