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【コラム】

21世紀のラグジュアリー論 イノベーションの新しい地平

ミラノ在住のビジネスプランナー安西洋之氏による連載。テクノロジーだけではなく、歴史や文学、地理、哲学、倫理が主導する21世紀の「新しいラグジュアリー」について考察しています。
コラム2019.10.31

Vol.1 ラグジュアリーを狙う意義


2019年11月号

いま、世界中のさまざまな業界がラグジュアリーに注目している。低価格の大量生産に極端に偏ったことによる企業と消費者の疲弊と飽きや、価格だけでなく、日常生活の機能的欲求に満たされた人たちの欲望の先が「心が満たされる質」に向き始めたのである。本連載では「ラグジュアリー」をキーワードに、日本の中堅・中小企業が海外市場で通用するラグジュアリーブランドを新しく構築するにはどうすればよいかを考えていきたい。

なぜいまラグジュアリーなのか

ラグジュアリー商品は品質が高く、長期間にわたって使われ、サステナビリティーである。特に、ファストファッションに代表される低価格帯の大量生産品が、「生活の質に貢献しているのか」「地球の環境に多くの無駄を生んでいるのではないか」と問われる中にあって、ラグジュアリーブランドは一つの方向を示す。量ではなく質を重視した商品としてのラグジュアリーブランドの評価は高い。

しかし、日本の多くの企業はこれまであまりラグジュアリーの領域をフォローしてこなかった。多額の投資をするマスマーケティングと異なったアプローチができるという意味で、特に中小企業において有効な戦略であるにもかかわらず、あまり顧みられることがない。

真珠のミキモトのように、海外市場でもラグジュアリーブランドを確立させた日本企業はある。しかし、そうした例は他にほとんどない。

従って、本連載ではラグジュアリーについて、基礎も含めてさまざまな観点から語っていく。そして、日本の中堅・中小企業が海外市場で通用するラグジュアリーブランドを新しく構築するにはどうすればよいか、考察を深めていきたい。

最初にラグジュアリーと呼ばれる市場の規模を押さえておこう。

ラグジュアリー市場のリポートを毎年発行している米国のベイン・アンド・カンパニー。彼らの2018年版の調査※によると、観光などの体験領域も含めたグローバルなラグジュアリー市場は144兆円(1ユーロ=120円で換算)、そのうち個人消費財は約31兆円(同)と見ている。これはトヨタ自動車の連結決算(2019年3月期)の年商レベルである。

 個人消費財市場を地域別に見ると、欧州10兆円、米国9兆6000億円、アジア(日本と中国を除く)で4兆7000億円、中国大陸2兆8000億円、日本2兆6000億円、その他1兆4000億円である。しかしながら、合計約31兆円のうち33% は中国人(国外での購入も含める)によるものと推定され、つまり10兆円は中国人によるシェアだと言える。高級ファッションブランドが従来と方針を変え、市場のテイストを尊重している傾向が出ているのは、このような状況がベースにある。

この規模感と動向を頭に入れることからスタートしたい。

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