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【コラム】

旗を掲げる! 地方企業の商機

「日経トレンディ」元編集長で商品ジャーナリストの北村森氏が、地方企業のヒット商品や、自治体の取り組みなどをご紹介します。
コラム2017.08.31

Vol.24 ここに来てもらう
北村 森

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2017年9月号

人を呼ぶのは誰か?

せっかく来たのだからと、参考までにビジネスバッグのことを、さらに尋ねてみました。

さすがに現物はなくて、この目で確認できたのは見本写真です。

ごくわずかな枚数の写真だったのですが、もう、気持ちが持っていかれました。見るからにしっかりとした作りであるのが、1枚の写真からでも想像できます。いくつかのデザインの写真を見せてもらいましたが、そのうちの1つに、とりわけ引かれました。

蓋のところが、美しい弧を描いた形状になっています。亀屋革具店の草創期に作られていた馬具がモチーフかと思いきや、そうではなく、厚さ3mmの革を使うために、必然的にこうした弧を描く形になるそうです。

ビジネスバッグまで購入するつもりはありませんでしたが、気がついたら「買います」と声を上げていました。次にいつ弘前まで来られるかも分かりませんし。

オーダーメイドで、手作業により完成するビジネスバッグです。私は、15万円は下らないのではないかと予想しました。

恐る恐る値段を尋ねてみると……。

「税込みで7万9900円です」。これには驚きました。さらに店のスタッフの言葉に、心が揺さぶられましたね。

「うちのバッグは長持ちするので、次の世代に引き継げますよ」

これはまさにダメ押しですね。

ここで、冒頭につづったことを、その場で思い出した次第です。地方の町ではやはり、「そこに行ってこそ真価が分かるもの」、また、逆に言えば「来てもらえるだけの何かが、そこにあること」が肝心という話。

そして、こういう「何か」とは得てして、たった一軒の店舗、たった一人のすご腕だったりするのです。北海道・木古内町のように、地域総出の団体戦で人を呼ぶ戦略も1つの手でしょう。その一方で、民間の一事業者が強い光を放ち、そこから地域活性化への道が広がるケースも確実にあります。

前号(2017年8月号)でご紹介した、日本最古の純喫茶もそうでした。一人が旗を掲げるところから始まる物語が存在し得る、ということですね。


筆者プロフィール

北村 森 (きたむら もり)
1966年富山県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。1992年、日経ホーム出版社に入社。記者時代よりホテルや家電、クルマなどの商品チェックを一貫して手掛ける。2005年『日経トレンディ』編集長就任。2008年に独立。テレビ・ラジオ番組出演や原稿執筆に携わる。サイバー大学客員教授(ITマーケティング論)。著書『途中下車』(河出書房新社)は2014年にNHK 総合テレビでドラマ化された。最新刊に『仕事ができる人は店での「所作」も美しい 一流とつき合うための41のヒント』(朝日新聞出版)。

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