Vol.24 ここに来てもらう
北村 森
2017年9号
足元にある宝
地方発の商品や取り組みを研究するため、日々、さまざまな地方を巡っています。この1カ月でいえば、地方紙(新聞)の活性化をどう成すべきかという勉強会で話をしたり、地元に根差した経営者が集まる会で講義をしたり、地方の商店街の皆さんと議論したり、といった具合です。
中でも強く印象に残っているのが、福井県の小浜市で催されたイベントです。北陸新幹線の延伸ルートが決定し、若狭湾に面した小浜市に、遠くない将来、新幹線が走ることとなりました。さあ、今から何をするべきか。小浜市長や、地元財界の人たちと話を交わす場に登壇したのです。
そのイベントの前と後、私は小浜の町を歩いてみました。改めて感じましたね。地方の町の足元には、まだまだ宝物が眠っています。地域活性化の基本は「この町に来てもらうこと」、これに尽きるのではないかとも感じました。
ネット通販から地元発ヒット商品を生み出したり、大都市圏で地域産品を売りまくったりするのも、もちろんいいでしょう。けれども、まずは何をおいても、その土地に人を呼ぶ、というところから始める意識が大事なのではないかと思いました。一足飛びに、全国に名を轟かせる売れ筋商品を作り上げて、地元を潤わせるのは現実的な話ではないですから。
有名な特産品や、海外からも観光客が来るようなスポットがないような、地味な町に人は来てくれるのか―。はい、あり得ます。以前(2016年7月号)の連載でつづった、北海道・木古内町の「道の駅 みそぎの郷 きこない」は、好事例でしょう。人口わずか4400人という過疎の町(それも、派手な観光地ではない)に、北海道新幹線開業1年間で55万人もの客が来訪しています。矢継ぎ早に施策を打ったから成し得た実績です。
先日、私は青森県の弘前市に足を運びました。
私としては、仕事というよりも、ちょっとした遊びのつもりでした。親しい友人から「地方のものづくりに興味があるのだったら、弘前にも行ってみれば」と言われ、ならばと思い立って、ふらり出かけたのです。
大正4(1915)年創業という老舗の革具店を訪ね、ベルトを購入するための旅――。目的は「1本の革ベルトを買う」、それだけでした。