TCG REVIEW logo

100年先も一番に
選ばれる会社へ、「決断」を。
【コラム】

旗を掲げる! 地方企業の商機

「日経トレンディ」元編集長で商品ジャーナリストの北村森氏が、地方企業のヒット商品や、自治体の取り組みなどをご紹介します。
コラム2015.09.28

vol.1 私が郷里で手がけていること
北村 森

mori_banner
2015年10月号

自腹主義で

総曲輪グランドデザイン会議が発足してから、動画制作が決まるまで、およそ半年。ところが、ここから足踏みを余儀なくされました。

費用をどう調達するのか。当初、商店主たちは自治体からの助成金を期待していたようですが、それが無理だと判明しました。そのため「いったんは動画制作を諦めて他の手を考えるか」という意見がありました。

私は怒りました。「この段になっても助成金頼みなのですか」「お金が降ってこなかったら、半年かけて決めたことも、直ちにフイにしてしまうのですか」と。
総曲輪通りの理事長が、ここで決断しました。「自腹でいきましょう」と。数カ月かけて商店主たちを説得し、有志がそれぞれ資金を拠出して2 本の動画を制作することを確定させました。

制作チームに入ってくれた地元のクリエーターも原価割れ覚悟、プロデュースを受け持つ私も持ち出しです。こうして、自腹主義のもとに制作は始まりました。

制作した動画は二つ。一つ目は、創業110 年以上を誇る老舗テーラーのバージョンです。
若き5 代目の発案で、世界のどこにもまず存在しない、1着のジャケットづくりの過程を動画に収め切りました。
「お客さまの注文服を制作したあとに残る端切れだけで仕立てる、パッチワークのジャケット制作」です。どういうことか。
ある部分はゼニア、それと隣り合わせるのはロロ・ピアーナ、そのまた横はスキャバル、といったふうに、高級ブランド生地の見本市のような1 着になるという話です。全て余った端切れですけれどね。でも、それだけに高いセンスが必要です。テーラーの心意気と技術を動画にまとめました。

mori_clothspreading

仕立服の端切れをつなぎ、ジャケットをつくる。端切れといえども、元は一流ブランドの生地だ

 

mori_jacket

出来上がったジャケット。まったく異なる生地のパッチワークには、センスと腕が問われる

 

mori_measuring

採寸を受ける筆者

もう一つ。「女子高校生、女子中学生を“ おばちゃん服” だけで全身コーディネートしてみた」という動画です。
古い商店街には、50 代以上の女性向けの婦人服店があるものです。老舗の店舗をつかさどる80 代のおばあちゃんの見立てで、売り物の服を使い、10代の女の子を変身させるという、まあ、こちらはちょっとしたしゃれを含んだ作品。

mori_galchanging

協力してくれたのはご当地アイドルのメンバー

 

mori_gal

“おばちゃんファッション”で決めポーズ

どちらの動画作品も3 分程度のものですが、あらん限りの力を込めて制作しました。次の一手こそ重要なのはもちろんですが、商店主たちが動き始めたことが何よりも大きい変化だと、私は感じています。

今回紹介した2本の動画はYouTubeで公開中。
老舗テーラーが、端切れで一着のジャケットをつくってみた。
JCとJKが、オバちゃん服でコーデしてみた。


筆者プロフィール

北村 森 (きたむら もり)
1966 年富山県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。1992 年、日経ホーム出版社に入社。記者時代よりホテルや家電、クルマなどの商品チェックを一貫して手掛ける。2005 年『日経トレンディ』編集長就任。2008 年に独立。テレビ・ラジオ番組出演や原稿執筆に携わる。サイバー大学客員教授(IT マーケティング論)。著書『途中下車』(河出書房新社)は2014 年にNHK 総合テレビでドラマ化された。最新刊に『仕事ができる人は店での「所作」も美しい 一流とつき合うための41 のヒント』(朝日新聞出版)。

1 2 3
旗を掲げる! 地方企業の商機一覧へコラム一覧へ

関連記事Related article

TCG REVIEW logo