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【コラム】

旗を掲げる! 地方企業の商機

「日経トレンディ」元編集長で商品ジャーナリストの北村森氏が、地方企業のヒット商品や、自治体の取り組みなどをご紹介します。
コラム2017.03.31

Vol.19 リアリティーのある高値
北村 森

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2017年4月号

「強い商品」が売れる時代

これは面白い乗り物だと思いました。「新幹線のグリーン車を利用するよりも高額なバスを人は使うのか」という疑問があるかもしれませんが、これ、けっこう使いでのある選択肢になるんです。

新幹線の最終便より遅い出発時刻のため、ぎりぎりまで仕事をするなり、会食するなり、家族だんらんの時間をとったりしてからでも間に合います。しかもホテル代がかからない。東京や大阪では昨今、ホテル代が高騰しています。その意味でも、バスに宿泊すれば仕事や生活の時間だけでなく、費用の節約にもなるということ。「たとえ2万円を支払ってでも利用したい」という考えの人は、間違いなくいるでしょうね。

それともう1つ。単純に「一度は体験してもいい」と思わせるだけの性質を有した商品であることが大きい。「業界初の完全個室バスって、贅沢なのか、それとも微妙なのか……」多くの人は気になるでしょう。SNS全盛の時代、人に語れる商品というのは、やはり強いと私は確信しています。

2014年の消費税増税後、消費トレンドがどのように推移したかをおさらいしてみると、もっと分かりやすくなります。「安くて品質そこそこの商品」が世の中を席巻するかと思いきや、そうではありませんでした。「値段の高い商品」が敬遠されたのではなく、実際には、いわば「どうでもいい商品」が売れなくなりました。

どういうことか。負担増の時代に入り、トータルの出費を抑えないといけない。でも、毎日を暮らす中で消費生活を捨てるわけにはいきません。

そうなると、消費にメリハリを付けながら、「強い商品」をより求める傾向が生まれてきます。強い商品とは、購入した実感を得られるもの、他にはない何かを確実に備えているもの、そして人に語れるもの、です。

だから、例えば、いくら価格が安くても平凡なメニューに終始してしまっていたファストフードや居酒屋チェーンは業績を落とし、値段の高低にかかわらず強烈な性質を有する店々に、人は列を成しています。

ドリームスリーパーが利用料2万円でありながらも話題をさらっているのは、その商品特性の強さがあればこそでしょう。別の言い方をすれば、安さくらいしか訴求力のない「どうでもいい商品」になりかけていた夜行バスの世界から脱却を目指したところに、消費者が共感したともいえそうです。
 


筆者プロフィール

北村 森 (きたむら もり)
1966年富山県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。1992年、日経ホーム出版社に入社。記者時代よりホテルや家電、クルマなどの商品チェックを一貫して手掛ける。2005年『日経トレンディ』編集長就任。2008年に独立。テレビ・ラジオ番組出演や原稿執筆に携わる。サイバー大学客員教授(ITマーケティング論)。著書『途中下車』(河出書房新社)は2014年にNHK 総合テレビでドラマ化された。最新刊に『仕事ができる人は店での「所作」も美しい 一流とつき合うための41のヒント』(朝日新聞出版)。

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