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【コラム】

旗を掲げる! 地方企業の商機

「日経トレンディ」元編集長で商品ジャーナリストの北村森氏が、地方企業のヒット商品や、自治体の取り組みなどをご紹介します。
コラム2016.12.22

Vol.16 そこまでやるか
北村 森

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2017年1月号

既存品を生かす次の一手

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鍋の本体は、IH熱源から取り外せる構造。鍋は今回の商品に合わせた新設計。 ご飯の炊き上がりまでは、浸水時間を含めて約60分。炊飯以外の調理にも対応する

そして2016年12月。同社は新たな商品を発売しました。それが『バーミキュラ ライスポット』。
鋳物ホーロー鍋であるバーミキュラの周りをIHの熱源で包んでしまうというもので、これは家電製品ということになります。小さな企業が家電製品を作った―でも、あくまでバーミキュラの発展形です。つまり、「飛び石」は打っていない。
商品名から想像がつくように、ご飯を炊くことに主眼を置いたものです。つまり、言ってみれば、高級炊飯“鍋”ということ。価格は税別で7万9800円と、大手家電メーカーの商品がひしめく、高級炊飯器の市場に真正面から殴り込みをかけた格好です。

しかしながら、土方兄弟に言わせれば、「家電を開発したという意識はさほどない」とのこと。「私たちは『道具』のメーカー」であり、「バーミキュラを存分に生かすための、理想の熱源を手に入れたかった」ために、この商品を投入したと言います。
従来のバーミキュラには、1つ泣きどころがありました。コンロにかけたときの火加減がとても難しかったのです。微妙なトロ火を保たねばならなかった。バーミキュラでご飯を炊くとおいしいという評判は、メーカーである愛知ドビーにも伝わってきていたそうですが、炊飯ともなると火加減はますます難しい。
ならば、IH熱源をくっつけてしまおうと土方兄弟は決断します。それがこの新商品です。
バーミキュラは、同社の工場の中で全て製造するというのが、土方兄弟の大方針でした。たとえバックオーダーを大量に抱えても、協力工場の構築はしなかった。全て内製です。
これは、「小さな町工場の製品なのだから、責任を持ってここで品質管理をしたい」との思いからでした。製造過程で何かの問題が生じたとき、出荷前に自らの目と手で原因をすぐに解明できますから、この方針は価値あるものだったと思います。「確かにヒットしたとはいえ、ひとたび何かの問題が起きれば、私たちのような中小企業はすぐに吹き飛ぶ」という土方兄弟の言葉は、とても印象的でした。

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