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【コラム】

旗を掲げる! 地方企業の商機

「日経トレンディ」元編集長で商品ジャーナリストの北村森氏が、地方企業のヒット商品や、自治体の取り組みなどをご紹介します。
コラム2016.10.31

Vol.14 プロダクトアウト
北村 森

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2016年11月号

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三重県紀北町は、熊野古道への入り口でもある小さな町。デアルケと名付けられた農園は、生食用トマトを生産し、町内で好評を博していた。この農園が次の一手として繰り出したのが『デアルケ200%トマトジュース』。価格は500㎖で3480円(税込み)と驚くような設定だが、人気は急上昇。注文から2週間待ちという状況も珍しくない
http://www.dealke.com/

「6次産業」という言葉が注目を浴び始めてから、10年ほどたちました。

農家や漁師、林業従事者が核となって商品化まで進め、ネットなどを通して販売まで担うというスタイルの産業を指すものです。

つまり、「1次産業×2次産業×3次産業」だから「6次」と称すわけですね。安倍晋三首相は2015年、この6次産業を展開することで、農業を成長産業にしたいと国会の閉会中審査で答弁しています。

私も、基本線としては首相の見解に賛同します。ただし実際のところ、6次産業のプロジェクトで成功している事例というのは意外に少ない。それはなぜなのでしょうか。

200%って、何?

数カ月に1度は、6次産業を巡るシンポジウムやセミナーに私は登壇しています。それこそ、北海道から沖縄までです。

そのイベント会場に展示された6次産品を見ていると、正直ちょっと落胆します。そこにあるのは、ジャムやジュース、ドレッシングが大半なのです。しかも、「○○さんのジャム」「おいしいドレッシング」といったネーミングが多い。これでは、他の商品との差異は消費者に伝わらないでしょう。

伝わらないということは、その商品が存在しないも同然です。実際に口にしてみると、決して悪くない味なのに、本当にもったいない。また、ネーミングだけでなく、他の6次産品と明らかに違う光を放つ中身を持つような商品が少ないという状況も、少々もどかしくあります。

そうした中、ネーミングでも中身でも強い存在感を有する6次産品に出合いました。

三重県紀北町の小さなトマト農園である「デアルケ」が、2014年から販売しているジュースです。

商品名は『デアルケ200%トマトジュース』。「200%って何だ?」

と、まず引っ掛かりますよね。それが大事なのだと私は思います。

200%というのは、言ってみれば“屁理屈”のようなものです。

このトマトジュース、どのように作るかというと、搾ったトマト果汁を7時間以上かけて、弱火でコトコトと煮詰めていきます。そして、半量になったら火を止めます。つまり、100%の果汁を半分になるまで水分を飛ばすから、「200%」ということ。

この表現が厳密には正しいかどうかはともかく、「200%って何?」と、消費者の目を引くところが実に心憎い。

農園主に尋ねてみたところ、「濃密ですとか、濃厚ですとか、そうした平板なネーミングではアピールできないと考えた」と言います。

この考え方がとても重要でしょう。ネーミングやキャッチコピーを考えるに当たって、「他の商品に置き換えても違和感のない表現」というのは、消費者の心に刺さらないんです。「この商品でしか言い得ないキャッチコピー」は、やはり強いという話です。

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