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【コラム】

旗を掲げる! 地方企業の商機

「日経トレンディ」元編集長で商品ジャーナリストの北村森氏が、地方企業のヒット商品や、自治体の取り組みなどをご紹介します。
コラム2016.08.31

Vol.12 逆境のときこそ投資する
北村 森

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2016年9月号

地方同士の連携目指す

若鶴酒造にとっては小さな話かもしれませんが、ラッキーとしか言えないことがありました。

1980年代の地ウイスキーブームの際、普通に考えれば1960年に仕込んだたるが使われても不思議ではなかった。20年ちょっとの時を経て、きっとその段階でもいい味だったことでしょう。なのに、手付かずで残っていた。

「おおらかな時代だったのでしょうね。これは本当に偶然の幸運としか言いようがありません」と担当者は話します。

もし1980年代にたるが開けられていたなら、他の原酒と混ぜるブレンデッドウイスキーとして使われていたでしょう。今回のように、たる出しのシングルモルトで提供されることはなかったはずです。

地ウイスキーブームの間も、たるの中で眠り続け、酒税法改正の後に襲われた地ウイスキーの氷河期にも難を逃れた。『三郎丸1960』とは、そんな存在なのです。

だから私は思うのです。この商品は、一体何なのか……。もちろんウイスキーであることは間違いない。でも私は、この商品は「時間」なのではないかと思うのです。その「時間」を体の中に収めるために、人は大金を払う。

取材で訪れた日、最後にこんな話を聞きました。

「ジャパニーズウイスキーの世界を育てるために、日本各地の蒸留所と連携してウイスキー造りの悩みも喜びも共有できる土台をつくりたい」

素晴らしい考えだと感じます。深みも奥行きもあるウイスキー文化を育むには、地域を超えた協力体制はとても重要ですからね。

 


筆者プロフィール

北村 森 (きたむら もり)
1966年富山県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。1992年、日経ホーム出版社に入社。記者時代よりホテルや家電、クルマなどの商品チェックを一貫して手掛ける。2005年『日経トレンディ』編集長就任。2008年に独立。テレビ・ラジオ番組出演や原稿執筆に携わる。サイバー大学客員教授(ITマーケティング論)。著書『途中下車』(河出書房新社)は2014年にNHK 総合テレビでドラマ化された。最新刊に『仕事ができる人は店での「所作」も美しい 一流とつき合うための41のヒント』(朝日新聞出版)。

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