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【コラム】

旗を掲げる! 地方企業の商機

「日経トレンディ」元編集長で商品ジャーナリストの北村森氏が、地方企業のヒット商品や、自治体の取り組みなどをご紹介します。
コラム2016.08.31

Vol.12 逆境のときこそ投資する
北村 森

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2016年9月号

危機を乗り越え

話を聞くと、そこにはもう1つ、思いがあったようです。蔵が火災で大変な事態となった折、地元に住む多くの住民たちが素早く駆け付け、消火支援や復旧作業を手弁当で助けてくれた。その恩に報いるためには、「もう一度ウイスキー造りをせねば」という気持ちを強く抱いたのだとか。

こうして完成した『サンシャインウイスキー』と名付けられた商品は、生産量こそ多くはありませんが、かなりスモーキーな味わいがあり、愛好家の間で根強い人気となりました。

このウイスキーは、当時の等級でいいますと、安価な「2級」でした。しかしながら、モルト原酒の比率を酒税法で認められるぎりぎりまで高めていたこともあって、その味が評価されたのです。

1980年代前半には「地ウイスキー」がちょっとしたブームになっています。若鶴酒造のウイスキーも、メディアでしばしば取り上げられました。

しかし1989年の酒税法改正により、全国各地で造られていた地ウイスキーの生産量は、実に94%も減少するという、文字通り壊滅的な事態を迎えました。地ウイスキーのほとんどは、かつての2級であり、改正後には価格面における優位性が消えてしまったためです。

ただ、若鶴酒造のウイスキーは、先につづったように、もともと酒税法ぎりぎりの線まで贅沢(ぜいたく)にモルトウイスキーを使っていたこともあって、固定ファンがちゃんと付いていました。それがあって、どうにか生き延びられたのです。

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蒸留所は昭和初期の木造建築。瓦屋根のウイスキー蒸留所というのは珍しい存在。 1989年の酒税法改正により、地方発の2級(当時)ウイスキーが壊滅的な打撃を受けた後も、 若鶴酒造はウイスキー造りをやめなかった

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