コラム2016.08.31
Vol.12 逆境のときこそ投資する
北村 森
2016年9月号
洋の東西を問わず、1本の酒には物語が付きもの。今回ご紹介するのは、国内で生まれたシングルモルトウイスキーです。
2016年6月、富山県の若鶴酒造が、55年物のシングルモルトを限定155本発売すると発表しました。それが『三郎丸1960』です。CASK(カスク) STRENGTH(ストレングス)とありますから、たる出しそのままです。加水もしていない。半世紀以上の長い年月を経て、アルコール度数は47度と、ほどよいものになっているそうです。
値段は、700mlで55万円(税別)です。価格だけ見ると、「ウイスキー1本に55万円!?」と思われるかもしれませんが、55年物のウイスキーとしては、かなり安いともいえます。商売っ気とは別の次元で売り出す―。そのような同社の狙いがそこから想像できます。
7月に、先行して50本を販売したところ、初日の段階ですぐに50人を突破。半月で100人を優に超える購入希望者があったそうです。
55年物のシングルモルトというのは、世界的にも極めて希少な存在です。どんな経緯でこの1本が生まれたのか、取材しました。