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【コラム】

旗を掲げる! 地方企業の商機

「日経トレンディ」元編集長で商品ジャーナリストの北村森氏が、地方企業のヒット商品や、自治体の取り組みなどをご紹介します。
コラム2021.01.29

Vol.65 顧客が1人でもいるならば
北村 森

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2021年2月号

 

 

主婦の言葉が大きな契機

 

では、介護用品を手掛けるようになったのはいつからなのでしょう。

 

1970年台後半のこと、水泳帽の売り上げ増により、同社が一息ついていたころの話でした。

 

フットマークの主力商品が、以前は赤ちゃん向けおむつカバーだったのを知る、近所の主婦が同社を訪れたそうです。その主婦には、ある悩みがあった。

 

「大人用のおむつカバーを作ってもらうことって、できますか」

 

そうなのです。当時、介護用品は今ほど種類が多くなく、家族の世話をする人が必要な商品を手に入れることさえ大変だったのです。と言いますか、求めている商品そのものが存在していない、ということもあった。大人用のおむつカバーは、その1つだったというわけです。

 

同社はこの主婦の言葉を聞いて、一点物として製造し、それを売ったのだそうです。どうしてわざわざそこまでするのでしょうか。

 

担当者は言います。「1人のお客さまがいたら、その背景には100人、いやそれ以上の顧客が存在すると考えよう。これが、当社の以前からの社是でした」

 

そして、その経験を足掛かりにして、水泳帽と並ぶもう1つの柱にすることを目指し、フットマークは介護用品の開発と販売に乗り出しました。そして実際、介護用品を多数展開するに至った。さらには今回お伝えしたTable withのような、「こうきたか」と思わずうなる商品まで手掛けたのです。

 

同社のエピソードからは、2つの教訓が読み取れますね。まず、新商品のヒントを見逃さないこと。そして、2つ目は時代の波を言い訳にしないこと。勉強になりました。

 

 


筆者プロフィール

北村 森(きたむら もり)
1966年富山県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。「日経トレンディ」編集長を経て2008年に独立。製品・サービスの評価、消費トレンドの分析を専門領域とする一方で、数々の地域おこしプロジェクトにも参画する。その他、日本経済新聞社やANAとの協業、特許庁地域団体商標海外展開支援事業技術審査委員など。サイバー大学IT総合学部教授(商品企画論)。

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