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【コラム】

旗を掲げる! 地方企業の商機

「日経トレンディ」元編集長で商品ジャーナリストの北村森氏が、地方企業のヒット商品や、自治体の取り組みなどをご紹介します。
コラム2015.11.30

vol.3 市場を塗り替えたワインセラー
北村 森

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2015年12月号

 消費者は見逃さない
 
「勝算は最初からありました」と、開発担当者は笑います。ファニエルの販路は大手家電量販店。営業をかけた初期の段階から「このスペックなら取り扱えます」と即答されたといいます。

ここで1つ、疑問に感じることがあります。

どうして先行する他のメーカーは、ファニエルのような機能を持たせたワインセラーを発売しなかったのでしょうか。

「分かっていても、つくれなかったのでしょう」。それがファニエル側の回答でした。

消費者のニーズがどこにあるのかを捉えていたとしても、どのような制御メカニズムにすればよいか、また、冷却器をどこに発注すればよいか、知識と実行力を備えるメーカーが事実上なかったというのです。

それともう1つ。「大手メーカーをはじめとする既存の企業では、決断のスピードが遅いため、結果としてファニエルのような製品を完成させることはできなかった」とも。だから、こうしてベンチャー企業を立ち上げて、理想のワインセラーの開発にいそしんだそうです。

「『ワインセラーとはこうあるべき』という考えを、製品を開発する上で、ただただ形にしただけ」といいますが、それを貫くのは大変であったと想像します。「1つ1つの発想のピースを、商品にはめ込んでいく作業だった」と開発担当者は振り返ります。その結果、コアなマニアだけでなく、フォロワー層も取り込めたのです。

ワインセラーのような家電製品に限らず、消費者は商品ごとの「わずかな差」をも見逃さずに購入選択することを、このファニエルの事例が見事に物語っている、私はそう思います。ライバル商品よりたとえ値段が高くても、購入後の満足度を優先するということでしょう。

消費増税下で消費者への負担が増えているこの時代、人は「高価な商品を買いたくない」のではなく「どうでもいい商品を買いたくない」という方向にかじを切ったとも表現できそうです。突き抜けた商品であれば、製造元の有名無名は問われない、ということでもあるでしょう。


筆者プロフィール

北村 森 (きたむら もり)
1966 年富山県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。1992 年、日経ホーム出版社に入社。記者時代よりホテルや家電、クルマなどの商品チェックを一貫して手掛ける。2005 年『日経トレンディ』編集長就任。2008 年に独立。テレビ・ラジオ番組出演や原稿執筆に携わる。サイバー大学客員教授(IT マーケティング論)。著書『途中下車』(河出書房新社)は2014 年にNHK 総合テレビでドラマ化された。最新刊に『仕事ができる人は店での「所作」も美しい 一流とつき合うための41 のヒント』(朝日新聞出版)。

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