vol.3 市場を塗り替えたワインセラー
北村 森
2015年12月号
なぜ、ここまで売れているのか。そのスペックを知れば、十分に納得がいきます。
同社の主力モデル『ファニエルSAB-90G』を、既存のワインセラーと比べてみましょう。これは24本収納可能な機種。
まず、価格です。このモデルの販売価格が約7万6000円。これは先ほど挙げたような低価格セラーと比較すれば3倍以上の設定です。それでも売れている。ファニエルのシリーズには、5万円台半ばで購入できる12本収納タイプの機種も用意されていますが、7万円台半ばの90Gの方がむしろ人気です。
最も大きな特徴は、90Gは本体上下2つの棚で別々の温度設定ができる点にあります。これは従来の家庭用ワインセラーでは、まず望めなかった機能です。
一般に、スパークリングワインの保存温度は6~8℃、白ワインは10℃台前半、赤ワインは10℃台後半です。これまでのワインセラーは確かに低価格であり、買い求めるに当たってのハードルは低かったけれども、白ワインと赤ワイン、スパークリングワインを同時に1台のセラーに収めるには無理がありました。それが、ファニエルの90Gであれば可能になったのです。使い勝手としてこれは極めて重要でしょう。
また、設定可能な温度帯が、5℃~20℃であるのも大きい。低価格のセラーは8℃以上であるものが少なくありません。これではスパークリングワインを保管するには機能不足でした。5℃から設定できることで、使いではさらに高まっています。この90Gであれば、例えば下の棚にワインを、上の棚に日本酒を、という収納もできるからです。日本酒の保存温度帯は5℃程度ですからね。
実際に使ってみると、冷却能力も申し分ありません。本体の扉を開けると庫内の温度がいったん上がりますが、ものの10~15分もすれば、元の設定温度に戻ってくれます。さらに言えば、ファニエルにはヒーター機能も備わっているので、冬場などに室温が下がった場面でも、セラーの温度は設定通りに保ってくれます。
こう見ていくと、売れて当然である気がします。