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【コラム】

旗を掲げる! 地方企業の商機

「日経トレンディ」元編集長で商品ジャーナリストの北村森氏が、地方企業のヒット商品や、自治体の取り組みなどをご紹介します。
コラム2015.11.30

vol.3 市場を塗り替えたワインセラー
北村 森

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Vol.3
市場を塗り替えたワインセラー

2015年12月号

「ヒット商品は、時に“音も立てず、静かにやってくる”」
それが今回のテーマです。
家庭用ワインセラーの市場規模はどれくらいなのか。冷蔵庫の100分の1というのが、その答えです。冷蔵庫は年間400万台規模ですから、家庭用のワインセラーはわずか4万台にとどまっていたのです。

ところが2015年に入って、ワインセラー市場に明らかな変化が表れました。低価格かつ特徴のある商品が相次いで登場したのです。購買層がほぼコアなワインマニアに限られていた市場が、これで一変。ごく一般的なワイン好きという程度の消費者が、ワインセラーの購入を検討し始めたようです。

例えば、デバイスタイルの『CD-7』というモデルは、縦長で省スペース型のワインセラーで、実勢価格は2万円前後。収納できるのは7本ですが、スタイリッシュな本体デザインと、値段の手頃さもあって、注目を浴びています。


ベンチャー、渾身の一台 

市場が小さいだけに、派手な広告宣伝が展開されるわけではないのですが、気が付けばワインセラーは着実に存在感を高めている印象です。冒頭で「音も立てず、静かに」とつづりました。鳴り物入りで登場する新商品ばかりがヒットするわけではないのが、消費トレンドの面白いところです。しかも、このワインセラー市場を引っ張る企業群を見渡すと、大手ではなく中堅・中小規模のメーカーが少なくない。もっと言えば、設立されて間もないベンチャー企業が、市場を席巻し始めているのです。

そのベンチャー企業が、今回の主役です。

さくら製作所というメーカー、本社は東京にあり、2014年に設立されたばかりです。創業の中心人物は2人。そのうちの1人は、農業機械メーカー向けの玄米保冷庫の企画設計会社を長年経営してきたそうです。もう1人は、他社でワインセラーの開発から営業まで携わってきた経験を有しています。この2人が、いわば“理想のワインセラーづくり”を目指して、ベンチャー企業を起こしたのです。

このさくら製作所が2015年1月に発売した家庭用ワインセラーは、『ファニエル』という商品名。このファニエル、広告宣伝活動を一切していないのに、現在、オーダーしても3カ月待ちの状態です。同社の開発担当者に尋ねたところ、「年間3000台売れれば経営が成り立つように目算を立てていたが、1~8月の8カ月間で、約9000台の注文が来てしまった」とのことでした。

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さくら製作所の『ファニエルSAB-90G』 税込みで7万6460円と高価格だが、3カ月待ちの状態が続いている。同社は2014年の設立で、ワインセラーの販売は15年1月から。それでも品切れを起こすほどの人気になっている

年間ベースでみれば、間違いなく1万台を楽に上回ります。もともとが年4万台という市場規模の家庭用ワインセラーで、名もなきベンチャー企業が、それもわずかな期間で、ここまでの実績を挙げるというのは驚きです。

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