Vol.34 こんな時代なのだから
北村 森
2018年7月号
起業する意義はいくつも
杉山氏がまず指摘するのは「大手企業は、パパたちにアプローチしたい。でも、その思いとは裏腹に、アプローチの手立てをあまり持っていない」という点です。
ママ向けのアプローチに関するノウハウであれば、大手企業はすでに構築できています。しかし、その一方で、パパ向けは遅れている。
放送作家生活20年の杉山氏は近年、個人の活動として「パパの子育て」をテーマに、自治体や両親学級などでの講演を続けたり、パパ向けイベントを催してきました。
つまり「私自身のストロングポイントと企業の求めるものが、実は合致していることに気付いた」のだそう。
杉山氏が続けてきた個人的活動が、実は企業のニーズにかなっていたということですね。
ここで気になるのは、なぜ杉山氏は、そんな活動に携わっていたのかという点。自身の経験から彼は言います。「男性が家事育児をしていると、どうも世間からの目に違和感を覚える。どうして『逆転夫婦』などと表現されるのか、という話です。男性が主夫の役目を果たしてもいいはず、との思いを伝え、世間の目を和らげたかった」
活動を通し、より多くの人に思いを伝え続けるには、「ビジネスとして、しっかり成立することをせねば」と思い立ったそうです。お金にはならないけれどもパパにいいことをなす、というのではなくて、きちんと持続する形を取りたかった。先細りでは、元も子もないでしょうから。そのために起業は必然、ということになりますね。
杉山氏はこうも話します。
「個人でパパ向けの活動を続けてきたわけですが、実際、先細りに陥りそうな気配を感じ始めて、このままではいけない、と気付きました」
好きな人同士で、わずかなお金を持ち寄って活動すると、当然限界が出てきます。しかも、好きな人同士の間でしか活動しないから、決して広がりは出ない。
こうした問題を打破するための起業でしたが、それにより、メリットも生まれました。
冒頭で触れたイベントのように、いわゆる“社対社”の折衝、つまり大手企業との連携模索が容易になった。先ほどお話ししましたように、少なからぬ大手企業がパパへのアプローチに頭を悩ませている状況下において、パパ系イベントでの訴求法を得意とする企業との連携は、ありがたい話に違いありません。
連携相手が個人や任意団体の場合には、大手企業は二の足を踏みかねませんが、企業であれば連携へのハードルは下がります。