Vol.33 「分かっていたのに」を実践する
北村 森
2018年6月号
3つの「びっくり」
私は常々、商品をヒットさせるキーワードの1つは「びっくり」であると考えています。「何だ、そんな簡単な言葉でひとくくりにするのか」とあきれるかもしれませんね。では、もう少し説明しましょう。
「びっくり」には、3つの種類があります。
まず「そんなバカな」。1970年代に発売となったソニー「ウォークマン」が、まさにそれですね。こんな手があったのか、という商品で、消費者と音楽の関係性をがらりと変えました。
次に「そこまでやるか」。一例としては、今年で開園35周年を迎えた「東京ディズニーランド」における、スタッフの接遇などが挙げられます。あの演出力はやはりすごい。
最後は「分かっていたのに」。私は、今後、これがより重要なポイントになるのではと踏んでいます。「分かっていたのに」とは、消費者というよりも、あまたのライバル事業者が、「やられた!」と悔しがるような「びっくり」です。
それを実行すれば顧客を驚かせ、購入に走るはずと、頭のどこかでは理解していたけれども、コストや手間の問題をはらんでいると考えたり、あるいは、本当に市場になじむかに確信を持てなかったりしたために、商品化しなかった。ところが、ある1社が動いて発売したら、見事にヒットしてしまった、というもの。
虚を突かれた格好になる他の企業にしてみれば、そのヒットぶりを眺めるにつけ、本当に地団駄を踏みたくなるほどの思いに駆られるでしょうね。