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【コラム】

旗を掲げる! 地方企業の商機

「日経トレンディ」元編集長で商品ジャーナリストの北村森氏が、地方企業のヒット商品や、自治体の取り組みなどをご紹介します。
コラム2018.03.30

Vol.31 「実は日本一」を生かす手立て

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2018年4月号

栗の持ち味を生かし切る

この『ぎゅ』開発に当たっては、「栗そのものを味わえる一品を」というところが出発点だったといいます。「うちはお菓子屋ではなく『栗屋』です。だから栗から離れてはいけない」と小田喜氏。

具体的にはどういう意味でしょう。「栗の持ち味を生かし切ってあげる、ということ」だそうです。

材料は、地元の栗と砂糖だけ。栗を蒸した後に裏ごしし、砂糖と合わせて、押し固めます。最後にオーブンで軽く焼くのですが、「このときに、均一に火を入れること、それと“ミディアムレア”の状態に仕上げることが大事です」(小田喜氏)

開発の途上では、それこそ客を引き付けるような形状(楕円形、あるいは栗の形状をかたどったものなど)も検討したのですが、結局は、菓子の厚さを確保できて、いい具合に火入れできる四角形に行き着いた。これは風味を優先するためでした。完成した『ぎゅ』は1片ずつ真空パックになっていて、一見するとなんだか高級菓子ではない感じにも捉えられてしまいそうですが、これも風味を十二分に生かすための方策らしい。

つまり、全ては「栗優先」だったわけですね。私は、ここまで実直な商品の方が、むしろ評価できると思いましたよ。インスタ映えなんて気にしている場合じゃないんだ、という話でしょうからね。よく、思い切りました。

誤解されている部分も

小田喜氏の話は続きます。技術を込めている半面、奇をてらわないことを徹底している『ぎゅ』ですが、それを徹底できたのはなぜなのでしょうか。

「この地は栗の本場です。本場であるなら本質を追わないと」

本質とは何?

「栗とは何なのか、を突き詰めることに他ならないと思います」

さらに聞いてみると、こんな話が出てきました。

栗という作物は、小田喜氏に言わせると、実は甘さが売りではないのだそうです。「本来の売りは、香りなんです」

「しばしば、『大粒でおいしい栗です』といった表現を耳にしますが、大粒のものが必ずしも風味に秀でているわけではない」とも。

しかも、採れたての栗は、甘さがそんなに強くはない。ただし、香りという意味では最高。

そうした、“栗の真の持ち味”を大事にした結果が、『ぎゅ』だったということと理解しました。

ちなみに、産地によって栗の味は大きく変わるのでしょうか。

小田喜氏の解説はこうです。

「産地より、作り手の考え方によって変わる、と見るべきです」

一般には、大粒で見栄えの良い栗を求める傾向にありますが、ややもすれば大味で水っぽくなる傾向もある。大粒の栗を意識して作れば、生産者にとっては収入も上がるが、実際の品質に関しては、良しあしという側面も……。

ここ旧・岩間町の生産者は、いたずらに大粒を狙っていないとも聞きました。ということは、より味の良い栗が生まれる可能性も高いということですね。

『いわまの栗菓子ぎゅ』ができるまで――
ポイントは均一に練り上げること、それと“ミディアムレア”状態の焼き加減にとどめること。
それが栗の風味を生かす最善の策だという。原材料は、地元産の栗、それに砂糖のみ
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