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【コラム】

旗を掲げる! 地方企業の商機

「日経トレンディ」元編集長で商品ジャーナリストの北村森氏が、地方企業のヒット商品や、自治体の取り組みなどをご紹介します。
コラム2015.10.30

vol.2 葉っぱビジネスの町のブルワリー
北村 森

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2015年11月号

デザインにも凝った

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さらに話を聞くと、クラフトビールの量り売りというのは、何も思い付きだったわけではないようです。
米国ポートランドで定着している、クラフトビールの量り売りがヒントになったといいますが、担当者が同地を実際に訪れるなど、準備は用意周到に進められています。ポートランドでは町に60 軒ほどのマイクロブルワリーがあるといいますから、その数はコンビニエンスストア並みです。地元の客たちは、マイボトルを携えて店を訪れ、気に入ったビールが見つかったらボトルに詰めてもらい、持ち帰ります。その光景を目の当たりにした担当者は「これだ」と確信したそうです。
ライズ& ウィンのクラフトビールは軽やかな味わいで、この山あいの地で飲むのに似つかわしい印象。現在造っているのは2種類のビールですが、近いうちにラインアップを増強し、ポートランドのブルワリーのような楽しさを、さらに創出したいと考えているとのことです。

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また、店舗内では、鹿肉のソーセージや猪肉のバーベキューなどと一緒に、ビールを味わうこともできます。
ブルワリーの建物には、上勝町で出た廃材が使われています。
8メートルにもなる吹き抜けを飾っている数々の古い窓枠も、町内の学校や家屋にあったものだそう。これがパッチワークのように美しく、まさに楽しい演出でした。かつてはこの町で使われていた思い出深い窓枠が、今度はこのブルワリーで生かされているということ。夜になると、ここから町を照らす、というのは、味わいのある話です。
5月のオープン以来、来客者数は予想を超えているそうで、売り上げも十二分な水準を達成していると聞きました。町おこしで大事なのは、ビジネスとしてきちんと成立することに他なりません。お金が回ることによって、その町おこしプロジェクトは持続できるようになるのですし、そのことで新たな人を呼び込めるわけです。

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上勝町で出た廃材が使われた8メートルにもなる吹き抜け

このブルワリーを訪れて話を聞き、私が思ったのは、もっともっと地元の人に、ここのビールを飲んでほしいということです。洒脱な外観の建築物、クラフトビールという流行アイテムということで、お年寄りはためらってしまうかもしれませんが、地元に愛されてこその一軒であり、そうあってこその町おこしプロジェクトであると感じます。
実際、ライズ&ウィンは、開業に当たって町の人を招待し、「未来永劫ドリンク1杯無料」のカードを渡したらしい。その考えは、とてもよいと思います。
あとは、地元の宿泊施設との連携をさらに強めてほしいところですね。この上勝町は、徳島市からクルマで1時間弱。鉄道は通っていませんから、クルマで行くしかない。訪れる仲間みんなでクラフトビールを堪能するには、町に宿泊してもらうのが一番でしょう。
幸い、この町には農家民宿がいくつかあると聞きます。次回はぜひ、そちらの魅力も体感したいものです。

RISE & WIN Brewing Co.
BBQ & General Store
TEL:0885-45-0688
http://www.kamikatz.jp/
徳島県勝浦郡上勝町大字正木平間 237-2


筆者プロフィール

北村 森 (きたむら もり)
1966 年富山県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。1992 年、日経ホーム出版社に入社。記者時代よりホテルや家電、クルマなどの商品チェックを一貫して手掛ける。2005 年『日経トレンディ』編集長就任。2008 年に独立。テレビ・ラジオ番組出演や原稿執筆に携わる。サイバー大学客員教授(IT マーケティング論)。著書『途中下車』(河出書房新社)は2014 年にNHK 総合テレビでドラマ化された。最新刊に『仕事ができる人は店での「所作」も美しい 一流とつき合うための41 のヒント』(朝日新聞出版)。

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