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【コラム】

梶原しげるのビジネスに効く!会話のヒント

文化放送のアナウンサーを経てフリーに転身。テレビやラジオ番組の司会として幅広く活躍してきた梶原氏が、ビジネスシーンに役立つ会話のヒントをお届けします。
コラム2017.10.20

vol.26 若者が電話に出ないのには理由があった

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2017年11月号

満員電車の様相が変わった!?

この2年ほど、毎週1回、深夜、某英語通訳予備校でひと仕事したあと、歌舞伎町界隈を抜け、新宿から満員の地下鉄に乗って目黒の自宅まで帰ります。もう最近ではすっかり慣れましたが、当初は車内の様子にビックリしました。

「酔客たちが大騒ぎして?」

いえいえ、全くの逆です。ラッシュ並みに混み合う電車内は、静まりかえっているのです!

「みんな疲れて、寝込んでいる?」

いえいえ、それも違います。残業帰りのサラリーマンも、お酒を飲み過ぎたためか目を真っ赤にしたグループも、深夜のデートからご帰還のカップルも、誰も彼もがほぼ例外なく、ギッシリと人で埋まった車内空間のごくわずかな隙間を見つけ、スマホを若干持ち上げ気味に立て、真剣に見入っては切羽詰まったような深刻な表情でせっせと指先を動かしています。

「大事な人に遺書でも書いて送っているの?」

確かにそんな真剣な形相ですが、もちろん違います。これまで何度も、彼らのスマホ画面をチラッと盗み見た私の経験によれば、1割がネットニュース、2割がゲーム、そして大多数の7 割が、SNSのチェックおよび送信です(注: 路線や地域に若干の差あり)。

書き込み内容は「駅まで車の迎え頼む」「遅くなってゴメン、ご飯いらない」などという「大事な連絡」は1割弱。ほとんどが「電車混みまくり」「冷房弱すぎ」「渋谷停車中、何待ち? ドア早く閉めろ」などなど、愚にもつかない「どうでもいい駄文」(失礼!)を、そのコメントなど見るか見ないか知れない赤の他人に向けて、というより空のかなたに向けるように打っています。

5年ほど前までならば、さっきまで一緒に飲み食いしていた仲間と車内でもその宴会の続きのように盛り上がり、愛する恋人同士なら、周囲を気遣うことなく思う存分愛を語らい合ったり、とにかく皆、よくしゃべっていたのです。私などはそういう話に耳をそばだて、面白い話があれば翌日のラジオのネタにしようとするほどでした。

しかし……そんな言葉の渦は、もはやそこに存在しないのです。長々と深夜の満員電車の「様変わり」を書いたのは、そこに今日的コミュニケーションの「劇的変化」を見た気がしたからです。

電話に出るのが怖い

「変化」は、主として20代から30代の若い男女を中心に進行しています。最近ではこの世代に電話をするとき、事前に「この後、電話するけど大丈夫ですか?」とメールを送って、「大丈夫です」と返事が来たときだけ電話するよう心掛けています。

「そんなアホみたいなことやっているヤツはお前ぐらいなものだろう?」

そうおっしゃる上司筋に当たる40歳以上の皆さま、若い連中に聞いてみてください。「いきなりの私からの電話、迷惑?」「はい迷惑です」とはさすがに言わないかもしれませんが、こんな言葉が返ってくるはずです。

「いやあ、そんなことないですけど、事前に電話の予約を入れていただければ、心の準備ができてとってもありがたいです。突然、電話が鳴って、スマホの画面にえらい人の名前が現れると緊張して、アワアワしちゃうことってあるんです。事前にメールで、電話するという予約をいただくと、ぶっちゃけ、マジでうれしいです」

「梶原、話、作ってんじゃないか??」

お怒りの方もいらっしゃることでしょう。私も2 年ほど前、目の前で若いスタッフに直接言われるまでは、思いも寄らないことでした。

「梶原さん、いきなりの電話は暴力です。親子ほども年の離れた人から何の前触れもなく電話が入るだけで、叱られるのか? 難癖つけられるのか? こっちはドキドキするんです。着信音が鳴るままにして知らんぷり。ようやく鳴り終わりホッとしたら、また呼び出し音! 思わず電源切ったこと、何度もありますよ」

実のところ、この彼自身のコミュニケーション能力は極めて高いのですが、「いきなりの電話を若者にしない方が無難ですよ」と上手にアドバイスしてくれた、ということなのです。

私のような「配慮に欠け、予告なしの電話をしてしまう困った人」を撃退するにはスマホを常に「留守電モード」にしておけば済みますが、そうはいかないのが会社のデスクに並ぶ「固定電話」です。

まるで知らない人から、思いも寄らぬタイミングで突然鳴り出す電話を、誰よりも先に手を伸ばし対応するのが「新人のお勤め」といまだにいわれています。それゆえ「生声コミュニケーション」が大の苦手な若い世代は、「絶望的な気分」にさせられているのです。そもそも、生まれた家に固定電話そのものがないという若者が少なくありません。私はこの人たちを「イエデンを知らない子供たち」と呼んでいます(大昔のヒットソング『戦争を知らない子供たち』のパロディーです)。

すなわち、電話の相手先の名前があらかじめ表示されない電話、どこの誰から、何の目的で、誰に当てた代物か見当の付かない音声をどうハンドリングしたらいいものか?

基本的な「音声コミュニケーション訓練」を受けぬまま、いきなり「生々しく、荒々しい声」に触れ、大混乱を来す、というのも分からないでもないのです。実際、私の知り合いの番組制作会社には毎年数人ですが「知らない人の電話に出るストレスに耐えられない」ことを理由に退職するAD(アシスタント・ディレクター)が存在します。

「梶原、君は今回、何を言いたいのだ?!」

我慢の限度に差し掛かった方に、今回の連載の目的をあらためて申し上げると「声のコミュニケーションが苦手だという人が急速に増えた時代に、われわれは、どうしたらいいかを考える」です。

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