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【コラム】

梶原しげるのビジネスに効く!会話のヒント

文化放送のアナウンサーを経てフリーに転身。テレビやラジオ番組の司会として幅広く活躍してきた梶原氏が、ビジネスシーンに役立つ会話のヒントをお届けします。
コラム2017.04.27

vol.20 おべっかの効用

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2017年4月号

おべっかの歴史

米国大統領だったエイブラハム・リンカーンもこんな言葉を残していました。「誰もが称賛を喜ぶものだ」。

私がこの言葉を見つけたのは米国のジャーナリスト、リチャード・ステンゲルの書いた『おしゃべりな人』が得をする おべっか・お世辞の人間学』(新潮社)を読んでいるときでした。

「おべっか(英語ではflattery)」は、普通ネガティブな言葉とされています。試しにお手元の辞書をご覧ください。「ごきげんを取ること・へつらい・おべんちゃら・ごますり」……散々ですね。

「おべっかる」という動詞もあることを、『日本国語大辞典』(小学館)から知りました。そこには二葉亭四迷『浮雲』から、「やはり課長におべっからなかったから、それで免職されたのか」が用例として載っています。

おべっかは、明治の昔から「卑屈なインチキ臭い態度」を記述する言葉として使われていますから、「ネガティブ言葉」だと言われても仕方ありません。

しかし、先述のステンゲル氏は、おべっかを「人間社会への慈しみの表現」「人と人をつなぐ、心遣い、称賛の言葉」「対人関係を円滑にするという目的を持った戦略的な賛辞」だと評価しています。

「おべっかこそが、極めて有効なコミュニケーションである」と言うのです。

例えばこんなことも書いています。「花嫁はいつでも美しい」「亡くなったら人は皆いい人」「生まれた赤ん坊はみんなかわいい」

これら、私たちが「ごく自然に口にする言葉」をおべっかとして非難すべきでしょうか?

同書のあちこちで、日常生活における「おべっか=賛辞」の果たす役割を正当に評価すべきだと力説しているのです。

ビジネスパーソンは戦略的おべっかで攻める!

「そんな訳の分からないことは、米国のおっさんだから言えるんだ!」

そういう声も聞こえそうなおべっかを、前向きに「正当なもの」として「上手に使う方法」を説いた実践的な本が、なんと日本にもありました!

ビジネスパーソンに向けた「最終兵器!」と表紙でうたっています。

ホイチョイ・プロダクションズ著『戦略おべっか どんな人でも、必ず成功する』(講談社)。この本ではおべっかを「賛辞の言葉」というより「行動」として書いています。

例えば、ある冬の寒い晩、織田信長が外出するとき、下っ端の部下として仕えていた木下藤吉郎(当時21歳、後の豊臣秀吉)が懐で温めた草履を差し出したことが縁で、その後とんとん拍子の大出世を果たす――。

誰もが一度は聞いたこの話。あれは「たまたま」だと伝える向きがありますが、あれこそが「藤吉郎が、出世を狙った戦略的おべっかだった」というのです。

このように、“出世”という意図・目的を持ち、戦略的に行動することで目上への敬意、称賛、賛意を表すものを同書は「戦略的おべっか」と定義しています。

信長に限らず、有能な人は忙しい。彼らが求めるのは即効性のある分かりやすい具体的なサービス、称賛。それこそが戦略おべっかだというのです。

「優秀で仕事ができる人は当然ながら忙しい。有能な上司、取引先は『敬うこころ』『気遣う思い』などという曖昧模糊とした『キモチ』をくんでいるほど暇じゃない!『 こちらの誠意に気付いてほしい』なんていうのは仕事のできない部下の幻想だ!賛意を、分かりやすい『戦略的おべっか』で見せろ!」

鋭い指摘だと感じました。「キモチ・ココロ・思い」というような、「ふわふわ言葉」の連発では相手にまるで届きません。

忙しい上司、取引先を「気分良くさせ、仕事を一緒にしたい」と思わせるには、具体的な称賛・相手の喜びにつながる行動を「分かりやすく見せる」ことです。

それこそが戦略的おべっかだというのです。

おべっかとは、「賞賛である」(リチャード・ステンゲル、原文ママ)と同時に「上手に相手をたたえる気配り」でもあるというわけです。

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