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梶原しげるのビジネスに効く!会話のヒント

文化放送のアナウンサーを経てフリーに転身。テレビやラジオ番組の司会として幅広く活躍してきた梶原氏が、ビジネスシーンに役立つ会話のヒントをお届けします。
2016.09.30

vol.13 会話のしくじりを、どう防ぐか?

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2016年10月号
 
ドライブに出掛けた 家族の例
 
 
唐突な例で恐縮ですが、たまの休日、子どもたちを東京スカイツリーに連れて行こうと言い出した父親がいたとしましょう。普段は仕事にかまけて家族を顧みない罪悪感を、久々のドライブで埋め合わせたいと考えました。
 
 
ところが道路は大渋滞。なかなか目的地に到着できません。
 
 
〈パターンA〉
「ちくしょう! なんでこんなに混んでるんだ。道路行政はどうなってる!!」
目的地に着けないイライラをまるで家族にぶつけるかのような父親に、家族は気まずい気持ちでいっぱいです。不機嫌な父親。帰りたいとぐずりだす娘。ため息をつく母親。ようやく着いた目的地で、家族が言葉を交わすこともありませんでした。家族にとって消し去りたい思い出だけが残りました。
 
 
〈パターンB〉
一方、同じケースでも、別の父親はまるで違った対応でした。父親はノロノロ走る隣の車に、犬が乗っていると気が付きました。
父親「あ、ワンちゃんだ!」
母親「かわいいねえ」
父親「手、振ってごらん」
娘「わーい! ルルちゃーん!」
父親「名前知ってるの?」
母親「○ちゃん(娘)は前から犬を飼いたいって、名前まで決めているんだよね」
父親「ワンちゃんか、いいなあ。どんなワンちゃん?」
娘「あの子(隣の車を指して)みたいなトイプードル!」
 
 
目的地に到着するまでの車内は、東京スカイツリーとは別の話題「わが家のワンちゃん飼育計画」で大いに盛り上がりました。困った渋滞が「貴重な家族だんらんのひととき」となりました。
 
 
ひたすら目的地に着くことしか考えないパターンAと、目的地までの道中で過ごす“今ここ”を楽しもうとするパターンBではどちらが望ましいでしょうか?
 
 
「次を」「先を」と着地点のことばかり考えるより、「今ここで起きていることも味わう会話」の方が楽しい気がしませんか?
 
 
こちらの方が筋書きをなぞるだけの打ち合わせや企画会議よりも、ずっと参加者同士の関係が良くなりそうですね。
 
 
「普段の腹立ちや怒りを吐き出して、周囲の人間の目を覚まさせたい!」
 
 
「毒や皮肉を交えたインパクトのあるメッセージを伝えたい!」
 
 
「気の利いたことを言って、頭の良い人だと感心してもらいたい!」
 
 
「あらかじめ引いた図面通り、できるだけ段取り良く目的地に着きたい!」
 
 
こういう意図だけで交わされる会話は「しくじる」可能性があります。
 
 
会話する相手が“今ここ”で何を考え、何を求めているのか? 話す相手へ、飽くなき興味や関心を持ち続けることが「会話のしくじり」を防止する特効薬。これが、今回の結論です。
 
 
 
 
 
 


 
 
筆者プロフィール
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梶原 しげる (かじわら  しげる)
 
早稲田大学卒業後、文化放送に入社。20年のアナウンサー経験を経て、1992年からフリーとしてテレビ・ラジオ番組の司会を中心に活躍。49歳で東京成徳大学大学院心理学研究科に進学、心理学修士号取得。東京成徳大学経営学部講師(口頭表現トレーニング)、日本語検定審議委員も務める。
 
 
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