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【メソッド】

梶原しげるのビジネスに効く!会話のヒント

文化放送のアナウンサーを経てフリーに転身。テレビやラジオ番組の司会として幅広く活躍してきた梶原氏が、ビジネスシーンに役立つ会話のヒントをお届けします。
メソッド2016.06.30

vol.10 不適切な日本語がコミュニケーションを阻む?

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2016年7月号
「流れに棹(さお)さす」、やっかいな存在?

もう1つ、例を紹介します。どうやらこれは、これまでの流れとは違って「本来的な意味」より「誤解された意味」の方が強そうなのです。

例えば、こんな会話があったとしましょう。

上司「君の今の発言は、会議の流れに棹さすものだ」

部下「部長。お言葉ですが、私は流れに沿って議論を前に進めるために、資料を集め、丁寧に説明してきたつもりです。なのに、流れに棹さすだなんて……進行を遅滞させる元凶みたいに言われたら甚だ心外です!」

上司「ちょっと待て、僕は君を高く評価したんだぞ。流れに棹をさして、ぐんと前進させた君の努力を大いに買っている。これからも、大いに流れに棹さしてくれたまえ!」

部下「え???」

部下の「???」という当惑に私も共感できます。「流れに棹さす」からは、「流れを止めるネガティブなニュアンス」を嗅ぎとってしまうからです。

なぜか? 「流れに棹さす=流れをせき止める=邪魔する」という考え方は、これまで紹介したどの言葉よりも、根強く支持されているだろうと実感するからです。

そのことは、例の『国語に関する世論調査』(2012年度)においても表れています。本来の意味でない方を使う人は59.4%と、本来の意味を使う人23.4%を大きく上回る結果になりました。本来の「ここは一気に進めるべきだ」という意味で「流れに棹さすべきだ」と言うと、「なんてことを言うんだ!」と反発されることの方が多そうです。

こうした災いを避けるには、「本来、この言葉は……」なんてことにこだわらず、「自分からは積極的に使わない」「相手が使ったときは文脈でしっかり判断する」といった対応を心掛ける必要がありそうです。

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