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【メソッド】

梶原しげるのビジネスに効く!会話のヒント

文化放送のアナウンサーを経てフリーに転身。テレビやラジオ番組の司会として幅広く活躍してきた梶原氏が、ビジネスシーンに役立つ会話のヒントをお届けします。
メソッド2016.05.31

vol.9 部下育成 5つの「べき」にご用心!
梶原しげる

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2016年6月号

4.部下の誤りを見逃さず、即座に修正してあげるべき?

 「部下を育てる」を「部下の間違いをしつこく探し、問いただし、修正させること」だと考える人がいるようです。しかしこの「あら探し」には思ったほど人を育てる効果はありません。
 未熟な部下です。ダメな点を探せばいくつも見つかることでしょう。そこを鋭く指摘されたとき、「さすが私の上司! この人にぜひ育ててほしい!」と考えるのはよほどのマゾかと思われます。
 「決定的にダメな点」に教育的指導を施すのは当然ですが、少なくとも部下との会話を駄目出しからスタートさせては、部下の「育ちたい」というモチベーションは下がる一方です。
 部下への駄目出しでうさ晴らしをしているような上司に、人を育てる資格などありません。「部下の中に、わずかに埋め込まれている美点」を発見する行為こそ、人を育てることだといえます。
 「おお、今日のネクタイ、ネイビーのジャケットにぴったりだ。革靴に靴下は履いた方がよさそうだけど、ハハハ。そうそう、君が先週言っていた、渋谷のテナント。昨日時間があったから立ち寄ったが、悪くない。提案書の見本を参考に、企画書に落とし込んだらどうだろう? 他の物件はちょっと難しそうだけど、この調子で頑張ろう!」
 こんな調子なら、部下もやる気が出るはずです。反対に、「革靴には靴下をはけ。提案するときはしっかりと企画書を添えろ。渋谷以外の物件は全然ダメだ! そもそもお前は分かっていない」といきなり人格否定を伴う駄目出しをする上司が、世間には少なからず存在します。
 具体的に「何がいいのか」「どこがいいのか」。結果だけでなく試みやプロセスに至るまで、美点を探し求め、評価し、ねぎらい、賛同することで勇気付ける技を、心理学の言葉で「コンプリメント」といいます。
 空々しいお世辞と違い、目の前の人の様子・発言を的確に観察して発せられるコンプリメントは、揺れる気持ちを落ち着かせ、問題解決を導くといわれます。
 「君はこことここが問題だ。その背景には生育歴が関係していて、どうやら……」などと裏読みされるよりずっとスッキリする気がします。
 人を育てるなら、断然「誤り発見」よりも「美点探求」がお勧めです。

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