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【コラム】

梶原しげるのビジネスに効く!会話のヒント

文化放送のアナウンサーを経てフリーに転身。テレビやラジオ番組の司会として幅広く活躍してきた梶原氏が、ビジネスシーンに役立つ会話のヒントをお届けします。
コラム2015.09.28

vol.1 突然の指名をどう切り抜ける?
梶原しげる

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2015年10月号

文学界の巨匠もあいさつに苦労していた

挨拶はむづかしい』『挨拶はたいへんだ』『あいさつは一仕事』(共に朝日新聞出版)。偉大な文学者・丸谷才一さんに「挨拶文学」という独特のジャンルを確立させたきっかけは、「人前でのあいさつが苦手」というご自身の体験でした。

結婚披露宴、文学賞の受賞式にと、さまざまな会合であいさつを求められる機会の多かった丸谷さん。「あいさつの苦しみ」を誰よりもご存じな丸谷さんは、毎回律儀にあいさつの原稿を書きました。50 年間にわたり書きためた苦難の「あいさつ人生」が3 冊の本に結実したというわけです。「あいさつが苦手」という方にはお勧めの名著です。

誰のために、どんな話を、どんな場面で、誰に向かい、どう語るのか?あいさつする側される側で交わされたエピソードを思い返し、心温まるユーモラスで秀逸なあいさつの秘訣がぎっしり詰まっています。

丸谷さんの「あいさつとの真剣勝負」を目の当たりにすれば、われわれ凡人が「行き当たりばったりや思い付きを、ダラダラあいさつとしてしゃべり散らす」など愚かしくて話になりません。文学界の巨星があいさつを完全原稿に仕上げたのに比べれば、事前に少しあいさつを考えておくことぐらいなら、すぐにでも実践できそうだと思いませんか。


出かける前には自分の役割をシミュレーション

私は、パーティーに限らず、人が集まる場面へは、必ずあいさつの「シミュレーション」をしてから出かけるようにしています。絶対に声が掛かるわけのない超大物のパーティーから、後輩たちの合コンレベルの会合に至るまで、現場に向かう前には必ずあいさつを考えます。大物芸能人が大勢参加するパーティーで私に「突然の指名」がある確率は限りなくゼロ(確実にゼロでしょう……)にもかかわらずです。

「そんな無駄な苦労、意味ないじゃないか?!」
そうおっしゃるかと思いますが、そうとも言えないのです。

その日のその会合で、自分が求められるとしたら、どんな役割だろう? 会の主役と自分との過去のエピソードで披露に値するネタはなんだろう? その場の聴衆の関心事は何だろう? あいさつするとき、聴衆の誰もが共通に体験していることは何だろう?
その日の天気、ニュース、会場で見られる光景・味わった料理・来賓たちのスピーチの内容など、あいさつに織り込めるよう多様な情報を入手し、観察し続けます。

その中から、使えるもの、使えないものを取捨選択して、2分弱という短い時間で共感を得られる「あいさつ」を構成するのです。メモした内容を個室トイレに入って、もごもご練習することもあります。

この努力の多くがその日には報われません。そもそも「突然の指名」はそう頻繁には起きないからです。
ところが、この「突然の指名に備える習慣」が、あいさつ力のみならず「会話力」をアップさせるのに大いに役立つことを実感しています。商談であれ、社内打ち合わせであれ社交であれ、人とコミュニケーションする上で大事なのは次の4 つのポイントです。

「場面をこころえ」「相手の立場を理解し」「自分の役割を認識して」「聞き手に新鮮な視点を提供する」

これらはどれも「あいさつ」に求められるスキルです。あいさつに限らず、実りある会話には、周到な準備と訓練が必要なのです。
「行き当たりばったり、出たとこ勝負で何とかなる」のは一部の天才だけ。これをしつこく申し上げておきます。

近々「突然の指名」を受ける可能性のある日はいつですか?


筆者プロフィール
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梶原 しげる (かじわら  しげる)
早稲田大学卒業後、文化放送に入社。20 年のアナウンサー経験を経て、1992 年からフリーとしてテレビ・ラジオ番組の司会を中心に活躍。49 歳で東京成徳大学大学院心理学研究科に進学、心理学修士号取得。東京成徳大学経営学部講師(口頭表現トレーニング)、日本語検定理事も務める。

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