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【コラム】

梶原しげるのビジネスに効く!会話のヒント

文化放送のアナウンサーを経てフリーに転身。テレビやラジオ番組の司会として幅広く活躍してきた梶原氏が、ビジネスシーンに役立つ会話のヒントをお届けします。
コラム2016.04.28

vol.8 採用側が「大学名」に こだわると損する理由
梶原しげる

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2016年5月号

みんなが大きな魚だった 高校時代 

考えてみれば、私自身「学ぶこと」へのモチベーションを上げるチャンスを得たのが「まるで無名な高等学校」のおかげだった気もするのです。

中学時代、学業不振を極めた私に、受験すべき公立高校は見当たりませんでした。私立高校を受験するほど家計に余裕がありません。

そのころ、たまたまちょっと変わった職業高校が横浜にできたとうわさに聞きました。神奈川県立貿易外語高校(現在は神奈川県立横浜国際高等学校に再編統合)でした。

当時、横浜は世界指折りの貿易港で、市内にはいくつも小さな貿易会社があり、若い人材を求めていました。「卒業したら即、中堅貿易マン」が同校の“売り言葉”でした。

「高校を出れば、食えるんだ! 何より、こんな私でも入れてくれる公立高校があるなら、こんなにうれしい話はない」。受験を決めたことを担任に伝えると、大いに喜んでくれました。

「あそこなら、確実に受かる。倍率はたぶん1倍だ!」

先生のおっしゃった通り、受験して落ちた者は1人もいなかったことを後に知ります。

人里離れた丘の上の校舎は、ベニヤでできた仮設の平屋。某銀行の保養所だったその場所には、高校生には分不相応な立派すぎるテニスコートが6面と、しゃれたクラブハウスが奇妙なコントラストを成していました。

全県から集まった生徒たちは、「選りすぐり」ではなく、各地区の「既存の名門校」を選ばなかった、または選べなかった個性的な連中ばかりでした。

100人ちょっとの生徒たちは訳も分からず、当時、本牧界隈にお住まいだった駐留米軍の「ボランティア精神あふれる奥様たち」から生の英語を学ぶことになります。

名門校では必死に大学受験対策が施される中、われわれはタイプライターの実習や、ふらりとやってくる外国人バックパッカーの歌や話を聞かされる「浮世離れした日々」を過ごしていたのです。

ここでは偏差値がどうのと気にする人は見かけません。どこかでみんな「はぐれもの」です。優越感もない代わりに、劣等感にさいなまれることもなかったのです。みんな勝手に「I am OK」と思っています。誰もが「小さな池」の「大きな魚」でいられた気がします。

また、他校との比較もありませんでした。日本に1つしかない職業高校の生徒たちは、比較する対象を持ちません。教科は「英語」「国語」「フランス語」「スペイン語」「タイプライター」、そして「世界史」という学校でしたから。

「卒業後は中堅貿易マン」として就職するはずでしたが、当時、大学受験生なら誰でも受ける旺文社の模擬試験をみんなで記念受験したら、全員びっくりするほどの高得点。「それじゃあ、試しに大学も記念受験」と無責任に受けてみたら、仲間は次々合格してしまい、びっくりするやら、親が金策に駆け回るやら、ひと騒動がありました。


小さな池の魚たちも 見逃さないで 

大学卒業後、大きなテレビ局と小さなラジオ局の両方から内定が出たとき、私が小さなラジオ局を選択した背景には、高校時代のこの体験があったからかもしれません。

読者の皆さんの中には「大きな池」で「大きな魚」となった方がたくさんいらっしゃることでしょう。厳しい競争にひるむことなく挑み、勝ち抜くことで、自らを磨き上げる。そして優秀な仲間たちとの交流を深めることで、さらなる高みを目指すことができる。大きな池でしか体験できないことも、現実には山のようにあるはずです。

しかしその一方で、有名大学ではない「小さな池」にだって「大きな魚」がいる「場合もある」ことを、人材採用のときには思い出してくださいますよう、冒頭の不憫な大学生に成り代わり、お願いいたします。


筆者プロフィール
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梶原 しげる (かじわら  しげる)

早稲田大学卒業後、文化放送に入社。20年のアナウンサー経験を経て、1992年からフリーとしてテレビ・ラジオ番組の司会を中心に活躍。49歳で東京成徳大学大学院心理学研究科に進学、心理学修士号取得。東京成徳大学経営学部講師(口頭表現トレーニング)、日本語検定審議委員も務める。

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