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【コラム】

梶原しげるのビジネスに効く!会話のヒント

文化放送のアナウンサーを経てフリーに転身。テレビやラジオ番組の司会として幅広く活躍してきた梶原氏が、ビジネスシーンに役立つ会話のヒントをお届けします。
コラム2015.10.30

vol.2 スピーチ能力をグンとアップさせる簡単な方法
梶原しげる

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2015年11月号

小泉進次郎議員のスピーチ術に学ぶ

2 年前の夏。某テレビ局の参議院選の選挙特番でのことでした。

瀬戸内海の緑豊かな小豆島。
真夏の日差しが照りつける中、町民がどんどん集まってくる様子が映し出されます。「政治に熱心な島だから」というばかりではなさそうです。

小豆島

小豆島「オリーブ公園」

はるばる東京から地元候補の応援に駆けつけた小泉進次郎議員が、島民たちのお目当てであることがすぐに分かりました。

肝心の地元候補の演説にはパラパラとした拍手でしたが、進次郎氏の登場場面では平均年齢70 歳を超えているとみられるおばさま方を中心に、熱狂的な声援が飛んでいます。

司会は、地元候補の秘書でしょうか。候補のスピーチが終わり、小泉議員を紹介するときには「お待たせいたしました!いよいよ小泉進次郎議員の登場です!!!」と、投票してもらいたい候補を紹介するときよりも10 倍のテンションで声を上げるのです。

候補者に後で叱られなかったのか心配になるほどです。

「わー! きゃー!」。100人単位の聴衆しか集まらない地方の島に超過密スケジュールを縫って、小豆島へやってきた進次郎議員。そして、彼に密着取材していたのは、なんと、あの池上彰さんと、クイズの女王こと宮崎美子さんでした!

なぜ、池上さんと宮崎さんまでここにいるのか? 2 人は、地元の人たちから隠れるように、ステージ代わりの櫓(やぐら)から遠く離れたところで密かにマイクを握っています。番組の狙いは「何でも解説してしまう池上さんが、小泉議員のスピーチ力を解説する」というものでした。

池上さんの解説が始まります。

池上「ほーら、服装からして選挙の候補者や応援演説する“普通の人”とは違うでしょう?ジャケットなしの白系、爽やかなワイシャツ姿。しかも、あえて長袖をたくし上げています。あれが最初から半袖シャツではダメなんです。勢いのよさ、さっそうとした感じが出ないんですよね」

池上さんのおっしゃるように、スピーチの伝達力をアップさせる「より良いデリバリー」を実現するためには、言語的な工夫だけでなく非言語的な「動き」や「見た目」も重要なのです。聴衆が「カジュアルな気分になりたい」ようなら、ダークスーツにネクタイ姿は逆効果です。
だからといってジーンズにアロハシャツはくだけ過ぎ。

求められているのはどのレベルか? 聞き手の願望を「自分の頭で考え分析する力」が、小泉さんのスピーチを際立たせます。全ては「何となく」ではなく「意図的」に行われています。
話す中身(コンテンツ)も、表情・仕草・服装・使用する語彙・声のトーン(デリバリー)も、聞き手を知ることで完璧にコントロールしているのです。地方での応援スピーチにここまで気を配る。さすがです。

宮崎「すてき~!」

池上「さあ、皆さん、このあとスピーチのつかみは地元ネタできますよ」

それが合図だったかのように、小泉議員のスピーチが始まりました。

小泉「めっちゃ暑い中、ようけ来てくれてありがとう!(地元イントネーションで)」

宮崎「わー、池上さん予想的中。地元ネタ+方言きました!」

池上「さあ、小泉さん、ここでスピーチの主役、お客さまの中に入り込んで行きますね。お客さんをいじりますよ、多分」

小泉「さっきから、そこのお母さん(最前列のおばさまを手で指して)、暑いやろ、暑いやろって、扇子で私に向けて扇いでくれています。風は届きませんが、気持ちはしっかり届いていますよ」

待ってました! 会場は、ドッカンドッカン大受けです。

宮崎「わ、池上さんまた的中!お客さん、いじりましたね!」

池上「ええ、お客さんをしっかり主役に立てていますよ」

小泉「小豆島は初めてなんです。さっき小豆島名物オリーブそうめんを食べました(ワー、キャー!)。胃袋に小豆島の気持ちが入りました(スゴーイ!)」

これを「ヨイショ(褒め・お世辞)」といいますが、私は究極の「聞き手目線」と理解しました。
スピーチを聞いてくれる人の「褒めどころ」を探し、見つけ次第それを口にする「技法」を、カウンセリングでは「コンプリメント」と呼びます。

落ち込みがちな相談者の気持ちを引き立てる場面で用いられることのあるアプローチです。
小豆島の人はまるで落ち込んでいませんが、気分をさらに盛り上げるのにこの技が効き目を発揮しています。小泉議員はこれをさらに深めていきました。

小泉「オリーブ牛、オリーブハマチ。100年以上の古い歴史のあるオリーブを使い、牛肉やハマチの養殖にも利用。こうした新たなチャレンジを成し遂げる小豆島。私はこれからの自民党は小豆島にならないといけないと思います!」

え?! 自民党が小豆島にならないといけない?? 冷静に聞けば「言い過ぎ!」ですが、スピーチを聴く島民は天にも昇る気持ちだったでしょう。

olive

小豆島の名産、オリーブ

池上「地元名産オリーブをコンテンツの中心に据え、聞き手に徹底フォーカスしていますね」

宮崎「すごーい!」

池上さんの解説を褒めるというより、進次郎議員のスピーチ力にノックダウンされた様子の宮崎さんでした。

( 日経BizCOLLEGE「梶原しげるの『プロのしゃべりのテクニック』」より一部引用)※筆者が番組の聞き取りをした
ため、実際の発言とは語句が異なる場合があります。

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