vol.5 ドイツの仕事術を100%コピーする必要はない
消費者から一定数の支持を得る
それでもドイツのサービスの質は、日本の足元にも及ばない。私は毎年1回か2回は日本に戻るのだが、「日本のサービスはすごい」と毎回、感心させられる。私はドイツでは「良いサービスは受けられない」と諦めているために、日本でのきめ細かなサービスに対する感動の度合いが一段と強いのだ。
日本の旅館では部屋に到着すると、まずおしぼりと和菓子のサービスがある。日本では当然のことだが、私のように外国から来た客はこれだけでも感動する。
夕食の後も、談話室には飲料水と氷を入れた魔法瓶が置かれているほか、空腹を感じた客のために、廊下の机の上には、丁寧にラップフィルムで包んだおにぎりが並べてある。しかも、「おにぎりがなくなった場合には、お気軽に従業員に声をお掛け下さい」という添え書きまであるのだ。
とある東京のホテルでは、ズボンのファスナーが壊れたため「修理してくれる店を教えてくれませんか」と尋ねたところ、頼んでもいないのに無料で直してくれた。
ドイツではとても考えられないサービスであり、感動した。ドイツをはじめとするヨーロッパのホテルが、軽食を無料で提供したり、ズボンを修理してくれたりすることはまずないだろう。
日本で列車の旅をしても、さまざまなことに気付く。例えば、切符の点検を終えた車掌が車両から出る時に、客の方を振り向いてお辞儀をしてから、次の車両に移る。なんという礼儀正しさであろうか。ドイツでは見られない光景だ。
日本の新幹線が折り返しのために終着駅に停車する時間は12分。短い停車時間の中、清掃チームはわずか7分で掃除を終える。車内は、7分で終えたとは思えないほど、清潔になる。日本のサービスの質の高さを象徴する早業である。日本人が仕事にかける熱心さ、真面目さが伝わってくる。ドイツ版新幹線であるICEの車内は、折り返し地点でもこれほどきれいに清掃されていない。清掃チームは、新聞紙や紙コップなど大きなゴミをビニール袋に集める程度だ。