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【コラム】

ドイツ人はなぜ毎年150日休み、 1日10時間未満の労働でも会社が回るのか

ドイツ在住ジャーナリストである熊谷徹氏による連載。労働時間が短く生産性の高いドイツの働き方を紹介しています。
コラム2018.12.27

vol.5 ドイツの仕事術を100%コピーする必要はない

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2019年1月号

「閉店法」で店員の休む権利を確保

もう一つ、サービス砂漠を象徴するものが、商店の営業時間の短さだ。ドイツに初めてやって来た日本人は、ほとんどの商店が日曜日や祝日に閉まっていることに戸惑う人が多い。日本では、コンビニエンスストアやスーパーマーケットなど夜間営業を行う店は多いが、ドイツでは考えられないことだ。

私が住んでいるミュンヘンでも、日曜日と祝日には、一部のパン店、大きな駅、空港やガソリンスタンドの売店を除けば、全ての商店が閉まっている。日本や香港のような、24時間営業の独立したコンビニはない。駅やガソリンスタンドの売店では、買える商品の種類が非常に少ない。

多くの日本人は、「日曜日や祝日には多くの市民が買い物をする時間があるのだから、店を開けておけば、売り上げが増えるではないか」と思うだろう。これは、アジア的な発想である。実際、香港やバンコクも、日曜日は全ての店が開いている。

しかしドイツでは、週末に店を開けて売り上げを伸ばすよりも、休みを優先させる。理由は「オフィスで働くビジネスパーソンだけではなく、商店で働く人々にも、家族との時間を楽しむ権利を保障するべきだ」という意見が有力だ。確かに、ライフ・ワーク・バランスがオフィスで働くビジネスパーソンや公務員だけに保障され、商店で働く人に保障されないのでは不公平である。特に、教会や労働組合は日曜日や祝日の営業について、頑として反対している。

ドイツの商店の営業時間は、「閉店法」という法律によって厳しく定められている。その歴史は古く、最初の閉店法はドイツ帝国が1900年に施行した。私が1990年にドイツに来た時には、平日の閉店時間は18時30分、土曜日は14時だった。

つまり、店員の休む権利が守られていたために、市民が買い物をする権利は、厳しく制限されていたのである。顧客が買い物をする権利の著しい制限は、約40年間も続いた。

私にとって、閉店時間までに買い物を済ませなくてはならないというストレスは、日本では経験したことのないものだった。土曜日には、「商店が閉まる14時までに買い物を済ませなくては」という思いがいつも頭の中にあり、慌ただしかった。平日の18時29分ごろ店の前に着いたら、鼻先で扉に鍵を掛けられたこともある。

1996年になると、月曜日から金曜日までは6時から20時まで、土曜日には16時まで商店を営業することが許された。2003年6月からは閉店法がさらに緩和され、土曜日も商店を20時まで営業できるようになった。日曜日と祝日の営業禁止だけは変わっていないが、一部のパン店は営業できるようになった。日曜日の朝食として、焼きたてのパンを買えるようになったのはよいことだ。1990年代に比べると、顧客の主権がかなり回復されたと感じている。

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アンケート結果

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※資料=Opinium Research(英国)
※12カ国の2万4000人の消費者を対象に実施

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