vol.5 ドイツの仕事術を100%コピーする必要はない
ドイツは、労働生産性が高く、社会保障制度が充実している国だが、パラダイス(極楽)ではない。多くの問題点も抱えている。
特に、われわれ消費者にとって問題なのは、ドイツのサービスの質の低さである。「おもてなし」を世界に誇る日本からドイツに転勤してきた日本人の中には、商店などの顧客サービスの悪さに強いショックを受ける人が少なくない。ドイツの店員は堂々としていて、客に対してへりくだった態度は取らない。ぶっきらぼうな態度の店員も多い。ドイツの店員を日本に連れてきて、接客態度について試験を行ったら、10人中9人は確実に落第するだろう。
“サービス砂漠”ドイツに悩んでいるのは、われわれ日本人だけではない。私の知人で日本に長年勤務したドイツ人は、故郷に戻ってきた直後、パン店の店員の態度の悪さにショックを受けたという。彼は、日本の店員の丁寧な接客態度に慣れていたので、母国の店員の態度の悪さに驚いたのである。
ドイツのレストランのウエートレスたちは、労働条件が悪いせいか、特に態度が横柄であることが多い。あるバイエルン風レストランで、10ユーロ前後の食事をした後に100ユーロ紙幣(日本で言えば1万円札に相当する)で払おうとしたら、「こんなに大きな紙幣で払おうとするなんて!」とウエートレスに叱られた。おそらく釣り銭の準備がなかったのだろう。
別のレストランでは、食事が終わった後に日本から来た知人と話をしていたら、「食べ終わった皿を渡してくれ」とウエートレスから指図された。レストランなどで、ナイフとフォークを平行にそろえておくことは、「食事が終わりました」というサインだが、このウエートレスはそのルールも知らなかった。いったいどのような社員教育をしているのか。以降、このレストランには足を運んでいない。