vol.4 長期休暇を取るには社会全体の合意が不可欠
ドイツの企業は、法律によって最低24日間の有給休暇を社員に与えることが義務付けられている。また大半の企業では、社員に有給休暇を30日与えている他、残業時間を毎年10~15日代休として消化することを認めている。
連載第1回目(2018年9月号)で紹介したように、ドイツ企業では1日の労働時間は原則として8時間を超えてはならない。10時間まで延長することもできるが、それ以上長く働くことは法律で禁止されている。このため、少し長く働けばすぐに残業時間がたまる。旧西ドイツでは製造業界の毎週の所定労働時間は35時間、金融業界では38時間だ。メーカーでは1日7時間、銀行では1日7.6時間を超えて働けば残業時間がたまっていく。
従って、ドイツの会社では「明日は残業を消化します」と言って金曜日に代休を取り、週末を含めて3連休にすることは珍しくない。会社側も社員の健康を一番に考えなくてはならないので、社員が残業時間を代休で消化することについて、文句を言わない。
つまりドイツの多くのビジネスパーソンは、残業の代休も含めると毎年40~45日の有給休暇を取っていることになる。さらに土日や祝日も含めると、彼らは毎年150日前後休んでいることになる。ドイツに駐在している日本企業のビジネスパーソンたちは「これでよく会社や経済が回っているものだ」という感想を抱いている。「月100時間を超える残業のために過労死」というようなニュースは、この国では聞いたことがない。